相続した不動産に「請求権仮登記」がはいっていたらどうする?

不動産の登記簿には「所有権移転請求権仮登記(以下、請求権仮登記)」というものが入っていることがあります。

なんか長いですね。

 

普通であれば「所有権移転登記」です。

そこに「請求権」と「仮」という文字が付け加えられています。

 

もし、相続した不動産に「請求権仮登記」がはいっていたらどうするのがいいんでしょうか?

 

まずは仮登記の「原因」が何なのかをチェックしましょう

不動産の登記には「原因」というものがあります。

 

例えば、相続による所有者移転であれば原因は「相続」になります。登記簿の「権利者その他の事項」という欄に「原因 平成〇〇年〇〇月〇〇日 相続」といったカタチで記載されます。

 

もし、相続した不動産に所有権移転請求権仮登記が設定されている場合、必ずその原因が何なのかをチェックしてみてください。

 

「代物弁済予約」が原因になっている場合には要注意です

原因が「代物弁済予約」になっている場合にはかなりの注意が必要です。

 

代物弁済というのは言ってみれば「お金の代わりにこの不動産をもって弁済します」ということです。

 

なんか抵当権と似ていますね。

抵当権が設定されている場合には、お金を返済できなければその不動産は競売にかけられます。

 

でも、代物弁済予約が原因の請求権仮登記の場合には、競売にかけられるのではなく所有権が移転します。

抵当権とはちょっと違うのですが、お金を返済できない場合には不動産を失うというところは同じです。

 

代物弁済予約が原因による請求権仮登記のことを仮登記担保と呼んだりもします。

 

亡くなった人が誰かにお金を借りていた可能性が高いです

相続した不動産に代物弁済予約が原因の請求権仮登記がはいっているということは、亡くなった人は誰かにお金を借りていた可能性が高いということです。

 

住宅ローンの場合は抵当権が設定されるので、住宅ローンとは違うカタチで借金をしていた可能性があるということです。

 

亡くなった人からそういった話は聞いてはいなかったでしょうか?

 

あなたがお金を返済する必要があるかもしれません

もし、すべての借金が返済できていない場合には、相続したあなたがその借金を返済しなければいけません。

だからこそ、代物弁済予約が原因の請求権仮登記には要注意なんですね。

 

残された遺産の額が借金よりも多ければそれでまかなえますが、もし、借金の額のほうが多い場合にはあなたの貯金から借金を返済していく必要がでてきます。

額があなたにとってあまりにも多い場合には、返済することは難しいでしょう。

 

そうなった場合、仮登記は本登記に移されます。

あなたが相続した不動産は請求権仮登記をしていた人の所有物になるということです。

 

ただ、仮登記から10年以上経っているのであれば消滅時効が成立するかも

ただ、仮登記から10年以上経っている場合には消滅時効が成立する可能性があります。

仮登記から10年間以上、債権者と何のやりとりもしていないという場合ですね。

返済があった場合には最後の返済から10年になります。

 

消滅時効というのは簡単に言えば、お金を返す義務が無くなるということです。

 

お金を貸した側からすれば理不尽ではありますが、裁判所では債権(お金を返してもらえる権利)は10年で時効により消滅すると判決されることが多いです。

 

実は、請求権仮登記の権利者は身内ということがあります。

亡くなった人の兄弟(保証人)とかですね。

 

亡くなった人の代わりに身内が金融機関にお金を返済した場合、請求権仮登記の権利が金融機関からその身内に移転します。

 

権利者が身内の場合、「仕方がないからいいよ」といって請求権仮登記をそのまま放置する可能性もあります。

そんな場合には消滅時効が成立する可能性が高いです。

 

「売買予約」が原因の場合にも気は抜けません

請求権仮登記の原因が「売買予約」になっていることも多いです。

売買予約というのは、その名の通りに「今は買うことができないけれども近い将来買うから予約させてくれない?」ということです。

 

例えば、買うためのお金が全額用意できないときなどですね。

お金ができてから買えばいいものですが、それだと第3者に売られてしまうかもしれないという場合、売買予約が原因の請求権仮登記をする場合があります。

 

なぜ仮登記をしておくのかというと、仮登記には順位保全効力があるからです。

 

例えば、仮登記をした後に、第3者にその不動産が売られてしまったとします。

不動産の所有権はその第3者に移転します。

 

でも、その第3者よりも前に仮登記してあるのなら、それを本登記に移すことによってそれをひっくり返すことができてしまうんです。

所有権をその第3者から自分に移すことができてしまいます。

 

その第3者にとってはたまったものではありません。

 

請求権仮登記が入っている場合、不動産を売却することは困難です

相続による不動産は売却されることも多いです。

相続しても誰も住まないのであれば特にそうですね。

 

でも、請求権仮登記が入っている場合、不動産を売却したくても売却することはとても困難です。

 

さきほども話しましたが仮登記には順位保全効力があるからです。

仮登記が本登記に移されることによって所有権を失うことになるかもしれない不動産を誰が購入するでしょうか?

 

そんなこともあって、請求権仮登記の原因が「代物弁済予約」ではなくて「売買予約」であっても気は抜けません。

 

代物弁済予約にしろ売買予約にしろ仮登記抹消しておくことが大切です

相続した不動産に請求権仮登記が入っていた場合、その仮登記を抹消することができないかを考えてみてください。

 

売買予約が原因による仮登記であれば、その権利者に不動産を売却してしまうという手もありますが「仮登記はしたけれども今となっては購入する気はない」ということも少なくありません。

相続が発生するまで放置されていたということはその可能性も高いでしょう。

 

ちなみに、売買予約の場合も消滅時効が成立する可能性があります。

「買うといって10年以上も放置していたんだから売買予約の権利(予約完結権)は消滅させてしまってもいいよね?」ということです。

 

いざというときに不動産を売却できるようにしておくためにも、抹消できる請求権仮登記は早めに抹消させておきましょう。

 

まとめ

というわけで、相続した不動産に請求権仮登記がはいっていたらどうするのかというお話をしました。

 

まずは仮登記の「原因」を確認しましょう。

原因が「代物弁済予約」の場合には亡くなった人が誰かにお金を借りていた可能性があります。

 

場合によってはあなたが返済義務を負うことになります。

 

ただ、代物弁済予約が原因の仮登記がされているにも関わらずに10年以上も権利者とのやりとりがおこなわれていない場合には消滅時効が成立する可能性があります。

お金を返す義務がなくなるということですね。

 

仮登記の原因が「売買予約」の場合も気は抜けません。

 

請求権仮登記が設定されている限り、不動産を売却することはとても困難になります。

仮登記には順位保全効力があるからです。

 

いざというときのためにも、早めに仮登記の権利者に連絡をして仮登記を抹消しておいてもらうのがオススメです。

 

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投稿者プロフィール

山河直純
山河直純住宅不動産研究家
一級建築士受験資格保有。建築家が設計した住宅、築40年以上のヴィンテージマンション、ハウスメーカーの住宅などなど、住宅全般をこよなく愛しています。特に狭小住宅好き。

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