マンションで耐震改修(耐震工事)が行われることが少ない理由

築40年以上のマンションって結構あります。

 

1981年以前に建てられた旧耐震基準ですから、

震度6強の地震がおきると倒壊の恐れがあります。

 

大地震に備えて、耐震改修が必要だとはよく言われています。

 

でも、実際のところは耐震改修がおこなわれることは少ないです。

それはなぜなんでしょうか?

 

ひとりひとりの経済状態が違うから。

根本的な問題はこれです。

ひとりひとりの経済状態が違うからです。

 

同じマンションに住んでいても、

住戸ごとに経済状態って違いますよね。

 

入居したころは同じような経済状態の人が多かったとしても、

だんだんと変わってきます。

 

中古マンションとして部屋を売りに出す人もでてきます。

入居者が変わることになります。

 

分譲賃貸として貸しにだされることもあります。

 

そして、築40年も経つと、

最初から入居していた人も、60〜70歳以上の高齢者になります。

 

年金暮らしになります。

 

お金をだせない人が1人でもいたらできません。

そんな中、1人でもお金を出せない人がいたら、

耐震改修をおこなうことはできません。

 

耐震改修には当然ながらお金がかかります。

 

東京都が2013年に作製した「マンション実態調査」によると、

改修費用は、だいたい、1部屋あたり100万円以内に収まることが多いようです。

 

特に200戸以上の大型マンションほどに、

費用は安くなる傾向があります。

 

戸建ての場合には、平均150万円ほどかかりますので、

意外に安いのかもしれません。

 

でも、実際に耐震改修をおこなっているのは、

調査したすべてのマンションの内、「5.9%」にとどまります。

 

「94.1%」のマンションでは耐震改修はおこなわれていません。

 

その1番の理由が「お金がない」なんですね。

 

修繕積立金で改修費用がまかなえない場合、

各住戸から一時金を徴収することになりますが、

1人でもお金をだせない人がいたら、

耐震改修はおこなうことができません。

 

外部リンク:マンション実態調査結果|東京都マンションポータルサイト

 

地震がくるのが先か?寿命がくるのが先か?

「地震がくるのが先か?寿命がくるのが先か?」という問題もあります。

 

ここで言う寿命というのは、

人の寿命です。

 

日本はどんどんと少子高齢化しています。

 

高齢者の場合、

「もう寿命もあまり長くないので、費用をかけてまで耐震改修をしなくてもいい」

という考えになりがちなんですね。

 

お金がない場合には、なおさらそうです。

 

もし、そういった高齢者が多いマンションの場合はどうでしょうか?

耐震改修がおこなわれない可能性は高いんじゃないでしょうか。

 

致命的な問題がおこらない限り、現状維持がいい?

「致命的な問題がおこらない限り、現状維持でいいんじゃない?」と思う人も結構います。

 

東京でも2011年の東北地震で、

「震度5強」を経験しています。

 

それでも、倒壊した建物はありませんでした。

 

つまりは、耐震改修をしなくても、

それぐらいの震度までは耐えられるという実績があるということです。

 

1923年の関東大震災の最大震度は「6」だったそうです。

 

であれば、

「耐震改修をおこなわなくても、なんとか次の地震に耐えられるのでは?」

と思う人がいてもおかしくありません。

 

また、悩ましいのが、

耐震改修をしたとしても倒壊しないとは限らないという点です。

 

2016年の熊本地震では最大震度が「7」でした。

 

倒壊した建物もありました。

 

でも、新耐震基準で建てられた建物の中にも倒壊したものがあったし、

旧耐震基準であっても、倒壊しない建物もありました。

 

旧耐震基準では50%が倒壊、

新耐震基準で20%が倒壊したようです。

 

もちろん、新耐震基準のほうが耐震性が強くなるのは疑いようがありません。

 

でも、新耐震基準でも倒壊するときは倒壊するということなんです。

 

戸建てだって同じです。

戸建ての場合も同じです。

 

東京の、山手線と環状7号線の間の地域は、

築古の木造戸建が密集しています。

 

道路も細かったりします。

 

大地震が起こったときには、

大きな被害がでる地域として行政にも指定されています。

 

耐震性や防火性を向上させるための改修に補助金をだしていたりもしています。

 

でも、なかなか改修は進みません。

 

お金がないというのもそうですが、

「地震がくるのが先か?寿命がくるのが先か?」

「致命的な問題がおこらない限り、現状維持でいいんじゃない?」

と思っているからですね。

 

でも、戸建ての場合には自分が「耐震改修をする!」と決めたら、

すぐに実行に移すことができます。

 

マンションの場合は合意が必要なので、余計難しい。

一方、マンションの場合には、

自分が耐震改修をおこないたいと思っていても、

他の人が耐震改修をおこないたくないと思っている場合、

実行に移すことができません。

 

合意が必要なんですね。

 

そのことが、マンションでの耐震改修をさらに難しいものにしています。

 

耐震診断すらおこなわれないことが多いです。

ちなみに、マンションでは耐震診断すらおこなわれないことがほとんどです。

 

ほとんどのマンション管理組合では、

「耐震診断をおこなわない」という結論に達します。

 

というのも、下手に耐震診断だけを受けると、

マンションの資産価値が落ちてしまう可能性があるからです。

 

耐震診断を受けてしまうと、

その結果を、重要事項説明書に記載しなければいけなくなるんですね。

 

耐震改修をおこなう気があるならいいのですが、

とりあえず耐震診断だけは受けておきたいという場合、

結果がダメだった場合、

重要事項説明書に「耐震診断の結果:耐震基準を満たさない」ということを、

記載しなければいけなくなるんです。

 

一方、耐震診断を受けなければ、

わざわざそんなことを記載しなくてもよくなります。

 

まとめ

というわけで、マンションで耐震改修がおこなわれることが少ない理由についてお話しました。

 

ひとりひとりの経済状態が違うからです。

1人でもお金をだせない人がいたら耐震改修はおこなうことができません。

 

「地震がくるのが先か?寿命がくるのが先か?」

「致命的な問題がおこらないかぎり、現状維持でもいいのでは?」

 

と思っている人が結構いるというのも、

耐震改修がおこなわれない理由のひとつです。

 

この問題は、戸建てにだって当てはまります。

 

でも、マンションの場合には住民の合意が必要という点で、

さらに問題が難しくなっています。

 

そして、マンションの場合、

資産価値が落ちるという理由で、

耐震診断すらおこなわれないことが多いです。

 

関連記事:旧耐震基準のマンションは購入しないほうがいい?

関連記事:旧耐震基準のマンションは売却しにくいでしょうか?

関連記事:1981年以前の旧耐震の場合にはフラット35は利用できないんでしょうか?

関連記事:マンション管理組合を法人化するメリットとは?

 

投稿者プロフィール

山河直純
山河直純住宅不動産研究家
一級建築士受験資格保有。建築家が設計した住宅、築40年以上のヴィンテージマンション、ハウスメーカーの住宅などなど、住宅全般をこよなく愛しています。特に狭小住宅好き。

家を高く売りたいなら知っておきたいこと

もし、あなたが家を高く売りたいと思っているのであれば、
これだけは知っておいたほうがいいかもしれません。