手付金の目的は?手付金の金額を決める前に知っておきたいこと

手付金って一体どんなものなんでしょうか?

「家を購入しようと思っているんだけれども手付金をいくらにしていいか分からない。なにか目安みたいなものや上限はあるんだろうか?それと、やっぱり購入するのを辞めたいと思ったときに売買契約を解約して手付金を返金してもらうことって可能なんだろうか?」

そう思うならぜひ最後まで読んでみてください。

手付金とは?

不動産売買における手付金って一体どんなものなんでしょうか?

売買契約のときに売主に渡されるお金のことです

手付金というのは、売買契約書の締結と同時に売主に渡すお金のことを言います。

たとえば、手付金は100万円と決まったのなら、売買契約のときに手付金100万円を持参します。そして、売買契約書にサインをします。そして、その場で売主に手付金100万円を手渡しします。

そうしてはじめて売買契約が成立します。手付金を用意できなかった場合には売買契約をおこなうことができません。手付金は、売買契約の成立を証明する証拠金とも言えます。

手付金は決済時に売買代金の一部として使われます

手付金は、決済のときに売買代金の一部として使われます。前払金や頭金として扱われるということですね。

ただし、売買契約書に「手付金は、残代金支払い時に売買代金の一部に充当する」と記載しておく必要があります。

というのも、手付金というのは本来は売買代金の一部として使うものではないからです。

本来であれば、家の引渡しが完了したら手付金は買主に返金されることになっています。売買代金の一部として使われないんです。売買代金の決済は手付金を除いたお金でおこなわれる必要があります。

そうなると、ローンで家を買おうとしている人は、より多く住宅ローンを組まなけれないけません。買主に大きな負担がかかります。

そういうわけで、実質は手付金は売買代金の一部として使われることがほとんどです。売買契約書にその旨記載しておけば問題ありません。

手付金の金額はどれくらいにするのがいい?

手付金の金額はどれくらいにするのがいいんでしょうか?

100万円になることが多いです

手付金は100万円になることが多いです。

100万円だと決まっているわけではないのですが、キリも良いですし100万円になることが多いです。仲介の不動産会社も100万円と決めているところが多いように感じます。

目安としては、売買代金の5%〜10%と言われることが多いです。

未完成の物件なら5%、完成済みなら10%と言われています。ということは、3000万円の中古住宅の場合は10%の300万円が手付金の目安になるということです。

でも、実際のところは手付金は100万円にされることが多いです。

振込ではなく現金払いが基本です

手付金は現金で手渡しするというのが基本です。

100万円以上のお金が動くのですから振込のほうがいいのではないかと思うかもしれません。買主と売主の売買契約日のスケジュールが折り合わなかった場合には、不動産会社の仲介によって手付金が振込になることもあります。

でも、基本的には現金での手渡しです。

手付金が100万円にされることが多い理由もここらへんにあるかもしれません。100万円であれば1束なので持ち運びも手渡しもおこないやすくなるからです。300万円だと100万円の束が3つ必要になります。

手付金をローンで用意することはできません

手付金はローンで用意することができません。

住宅ローンを組めるのは手付金や頭金「以外」の部分です。手付金は貯金して貯める必要があるということです。100万円ならまだいいのですが、300万となるとなかなか貯金するのが難しくなってきます。

家を買いたいけれども、300万円の手付金を用意できないという人は多いのではないでしょうか。

そうなると仲介の不動産会社としても困ってしまいます。

家を買いたいというお客さんがいるのに手付金のせいで成約に至らないということになってしまいます。仲介手数料を得ることができません。

そんなこともあって、購入のハードルを下げるために手付金は100万円にされることが多くなっているような気がしています。

ちなみに、手付金を用意するのにカードローンは利用しないほうがいいです。カードローンを利用するということは借金をするということです。売買契約のあとには住宅ローンの審査が待っています。直近でカードローンの利用があれば不利になってしまいかねません。

手付金には上限がある?

手付金には上限というものがあるんでしょうか?

売主が不動産会社なら手付金の上限は20%です

売主が不動産会社の場合に限って、手付金の上限というのは決まっています。

売買代金の20%です。

不動産会社が3000万円の家を販売している場合には、600万円まで手付金として支払うことができるということです。でも、上限ギリギリの手付金を支払ったほうがいいシチュエーションというのは稀です。

のちほど詳しくお話しますが、手付金の目的は売買契約の解約を難しくするというところにあります。手付金を支払ったあとに売買契約を解約するということは、手付金を放棄するということです。600万円を放棄するということです。

つまりは、手付金を高くするということは解約の意志がないということのアピールでもあります。

人気物件の場合は、家を購入するのに競争がおこることがあります。そういうときに、手付金を上限ギリギリに設定するということは有効かもしれません。

1000万円以上の場合には保全措置をする義務があります。

高額な手付金は、売主にとっても負担になることもあります。

売主が不動産会社の場合、高額な手付金に対しては保全措置をとらなければならないということが宅地建物取引業法第41条(外部リンク)の中で定められているからです。売主が個人の場合には適用されません。

高額な手付金とは一体どれくらいかというと、1000万円以上、もしくは、未完成の物件の場合は売買代金の5%以上、完成済の物件の場合は10%以上、と決められています。

たとえば、5000万円の完成済み物件だった場合、500万円よりも多くの手付金になると不動産会社は保全措置をとる義務が発生します。1000万円以下ですが、10%以上なので保全措置の義務が発生してしまいます。

保全措置というのは、手付金を銀行や保険会社などの第3者に預けることをいいます。たとえ、不動産会社が倒産したとしても、手付金が買主に返金されるようにです。

手付金の目安は5%〜10%と言われますがその根拠はここからきています。保全措置をおこなう義務が発生しないギリギリのラインです。

売買契約を解約したいときには手付金はどうなるのか?

売買契約を解約したいときには手付金はどうなるんでしょうか?

手付金の目的は売買契約の解約を難しくすることです

さきほどもお話しましたが、手付金の目的は売買契約の解約を難しくすることにあります。

売買契約の解約に何のペナルティも課されないのであれば、売買代金の決済の直前になって「やっぱり買うの辞めた」ということも簡単にできてしまいます。その反対もまたしかりです。

家は高額ですし生活するための必需品なので、そういうことが頻繁におこると困ってしまいます。

そんなわけで、売買契約の解約にはペナルティが発生する仕組みが作られました。どんなペナルティかというと、手付金そのものがペナルティです。もし、買主が売買契約を解約した場合、手付金すべてを失うことになります。

ちなみに、手付金には3つの性質があります。

  • 証約手付
  • 違約手付
  • 解約手付

不動産売買の手付金はこの3つすべての性質を備えています。

証約手付というのは、売買契約が結ばれたことを証明する手付金です。売買契約を結ぶときに手付金は売主に手渡されるのもそのためです。

違約手付というのは、売買契約書の内容に違反があったときのペナルティーとしての手付金です。たとえば、引渡日に売主の引越しが間に合わなかったなどですね。債務不履行と言ったりします。そうなるとペナルティーとして手付金の2倍の額を買主に支払わなければなりません。

解約手付というのは、売買契約書を締結したあとの解約のペナルティとしての手付金です。買主が解約する場合には手付金を失い、売主が解約する場合には買主に2倍の手付金を支払わなければいけません。

売買契約書の中に「手付金には解約手付としての性質を付与する」などとわざわざ明記されることもありますが、3つの性質すべてを持っています。

解約したいなら手付金は諦めるしかありません

売買契約を解約したくなったのであれば、手付金は諦めるしかありません。

手付金を諦めて売買契約を解約することを「手付流し」と言ったりもします。他に魅力的な物件がみつかったとき、資金的な問題が発生したとき、心理的な問題が発生したとき、手付流しがおこなわれることがあります。

いつまでなら売買契約を解約できるのか?

不動産売買契約はいつまでなら解約できるんでしょうか?

明確に決まってはいません

実は、明確には決まっていません。

判断の基準としては、買主・売主が売買のために具体的に行動を起こしているのかが基準になります。”履行に着手”するまでのあいだと言われたりします。

この”履行に着手”という言葉がとても紛らわしいんですね。売買契約のトラブルで裁判がおこなわれた事例はたくさんありますが、いつ”履行の着手”がおこなわれたのかという判断は裁判官によって変わってきます。

中間金が支払われたとき

“履行の着手”のひとつの可能性としては、中間金が支払われたときです。

未完成の物件の売買契約を結ぶときには中間金の支払いが設定されることがあります。売買契約を締結してから、実際に家が完成するまでの期間が長くなるからです。

売買代金の一部が支払われるわけなので、確かに”履行の着手”とも言えます。

ただ、中間金は手付金として扱われるので中間金の支払いも売買契約の締結の一部という見方もできます。

残代金が支払われたとき

残代金の支払いがおこなわれるときは確実に”履行の着手”と言えます。

というのも、残代金が支払われるときは買主・売主、両者の仲介会社、司法書士など複数人が集合します。”履行の着手”と言わずしてなんと言うでしょうか。

所有権移転登記の手続きがおこなわれたとき

家の所有権移転登記の手続きがおこなわれるときも”履行の着手”と言えます。

所有権移転登記は、残代金の決済と同時におこなわれることがほとんどです。売買契約書の特約事項の中には「所有権移転登記は残代金の決済日と同じとする」という旨が記載されるからです。

実は、特約事項の中にその旨記載しておかないと、法律上は売買契約書が締結された日に家の所有権が買主に移転することになってしまいます。

ともあれ、残代金の決済日が”履行の着手”だとすると、決済日前日までなら売買契約を解約することができるということになります。

売買契約書に”手付け解除期間”を明記するのが一般的です

決済日直前の解約を防ぐためにも、解約できる期間を売買契約書に明記しておくことが一般的になってきています。

特約事項の中に”手付け解除期間”を明記するんです。売買契約書が締結されたあとの2週間から1ヶ月後に設定されることが多いようです。

売買契約書に手付け解除期間が明記されているのであれば、その期間を超えてからは解約はできなくなります。

手付金を返金してもらえる条件は?

手付金が返金される場合もあります。どんな場合なんでしょうか?

ローン審査に通らなければ手付金はもどってきます

家はローンを組んで購入する人がほとんどです。

ローンを組むには審査に通らなければなりません。住宅ローンの審査は売買契約書が締結されてからおこなわれます。つまりは、売買契約書が締結されたのにもかかわらずに、ローンの審査に落ちてしまうということがおこりえるわけです。

そうなると、売買契約は白紙撤回されます。

解約ペナルティーも発生しないので、売主に支払った手付金は返金されることになります。

ローンを組んで家を購入する予定の場合には、売買契約書の特約事項に”ローン特約有”や”融資特約有”と記載します。

売主が売買契約を解約したときには2倍になってもどってきます

もうひとつ、手付金が返金される場合というのがあります。

売主側が売買契約を解約したときです。「売買契約を結んだけれども、やっぱり家は売却できません」ということです。

そういった場合は、売主はあなたに手付金の2倍の金額をあなたに支払わなければいけません。売買契約の解約というのは買主よりも売主のほうがペナルティが重いんです。

申込金と手付金の違いとは?

手付金と似たようなものに、申込金もしくは申込証拠金(以下、申込金)というものがあります。手付金とどう違うんでしょうか?

申込金は抽選券みたいなものです

申込金は、売買契約書が締結されるときではなくて、購入申込書(買付証明書)を提出するときに請求されるものです。

申込金というのは必ず必要なものでもありません。

どうして申込金が請求されることがあるのかというと、本気で買う気があるのかどうかを試すという意味合いがあります。

たとえば、人気の新築マンション。申込金は新築マンションで請求されることが多いです。人気のある新築マンションだと、買主が多くて購入できるかどうかが抽選になることがあります。申込金というのはその抽選券のような意味合いで請求されることがあります。

法的な効力はないので返金してもらうことができます

手付金には法的な効力がありますが、申込金には法的な効力はありません。

購入申込書を撤回したとしても、きちんと返金してもらうことができます。まれに、返金に応じない不動産会社もあるようですが、違法ですので法的な措置をとってきちんと返金してもらいましょう。

買付証明書には法的な効力・拘束力はあるのか?(関連記事)

申込証拠金は返金してもらうことはできるんでしょうか?(関連記事)

まとめ

というわけで手付金についてお話しました。

手付金の目安としては100万円ほどだと思っておけばいいのではないかと思います。

もちろん、それ以上でもそれ以下でもいいのですが、大事なのは売主がどう感じるのかということです。手付金があまりにも少額な場合は、売買契約を結んでも解約されるんじゃないかと不安に感じるかもしれません。反対に、あまりにも手付金が高額の場合は、売主側に不手際があったときに高額な違約金が発生してしまいます。

また、売買契約書を締結して手付金を支払ってしまったら基本的には返金されません。きちんと考えたうえで売買契約に望みましょう。

投稿者プロフィール

山河直純
山河直純住宅不動産研究家
一級建築士受験資格保有。建築家が設計した住宅、築40年以上のヴィンテージマンション、ハウスメーカーの住宅などなど、住宅全般をこよなく愛しています。特に狭小住宅好き。

家を高く売りたいなら知っておきたいこと

もし、あなたが家を高く売りたいと思っているのであれば、
これだけは知っておいたほうがいいかもしれません。