「耐火構造」と「防火構造」ってどんな違いがあるんでしょうか?

準防火地域に2階建ての木造住宅を建てたいと思うと「防火構造」として家を建てる必要があります。

一方、4階建て以上の建物を建てたいと思った場合には「耐火構造」にする必要があります。

 

「防火構造」も「耐火構造」も似たような言葉ですが、実は結構違います。

一体どんな違いがあるんでしょうか?

 

お隣が火事になっても「もらい火」にならないようにするのが防火構造です

火事が起こると、隣の家に火が燃え移ることがありますよね。

「もらい火」というやつです。

 

防火構造というのは、簡単に言うと「もらい火」から自身を守る構造のことを言います。

 

外壁や軒裏が火にさらされても簡単には燃えないように、燃えにくい材料を使って家を建てます。

 

火事がニュースになることがありますが、お隣の家まで火事になっていることってそれほどないと思います。

というのも、最近の家は防火構造になっていることが多いからなんですね。

 

建物が密集している場所では特にそうです。

 

「30分」建物を守ることができればそれでいい

燃えにくい材料って言いましたが、具体的には「30分間」は燃えない材料です。

 

燃えにくい材料というのは、燃え始めるまでの時間によってグレードが分かれています。

 

一番下は難燃材です。

5分間燃えずにいられる材料です。

 

その次は、準不燃材。

10分間燃えずにいられる材料です。

 

その次は、不燃材。

20分間燃えずにいられる材料です。

 

その次が、防火材です。

30分間燃えずにいられる材料です。

 

ちなみに、お隣が火事になったとしても、火にさらされる可能性がある部分って限られていますよね。

「延焼のおそれのある範囲」とか「延焼ライン」と呼んだりしますが、防火材を使用するのはその範囲だけでOKです。

 

建物全体を防火材で覆うという必要はありません。

 

ただ、結果として全体を覆う必要になることは多いです。

というのも、延焼ラインというのは、1階部分は3メートル、2階以上は5メートルになっています。

 

お隣の敷地との境界線からの距離です。

結構ありますよね。

 

敷地が縦横10メートルの100平米の土地の場合には、左右に家が建っているのであれば、2階以上の部分は全体が延焼ラインになります。

1階部分は中央の4メートルだけは延焼ラインから免れますが、そこだけ材料を変えるというのも不自然になるかもしれません。

 

自身が火事になったとしても「崩れない」ようにするのが耐火構造です

防火構造は「もらい火」から建物を守る構造でした。外部から身を守ることが重要視される構造です。

 

一方、耐火構造は違います。

外部から身を守ることも含まれますが、それよりも、自身が火事になったとしても、崩れないでいられるかということが重要視されます。

 

だからこそ、「耐火」なんですね。

例え、火事になったとしても耐えられる構造ということです。

 

準防火地域であっても、4階建て以上の建物には耐火構造が求められます。

というのも、4階建ての建物に簡単に崩れられては困ってしまうからです。

 

4階建ての建物が火事になった場合、4階にいる人はそう簡単には建物から逃げることができません。

 

非常階段を使って1階まで下りるか、窓から飛び降りるしかありません。

もしくは、屋上から飛び降りるとか。

 

でも、そういうことができるのも、建物が崩れないでいるからです。

 

火事になっても「45分」以上崩れないでいられることが求められます

建物が崩れないようにと言いましたが、火にさらされながらずっと崩れないでいられる建物というのはありません。

 

耐火構造の場合にも、防火構造のように耐えられる時間というものが指定されています。

少なくとも「45分」以上は火にさらされても耐えられる構造が必要になってきます。

 

耐火構造には2種類あります。

耐火構造と準耐火構造です。

 

耐火構造のほうは「1時間」以上、準耐火構造のほうは「45分」以上、火にさらされても崩れないでいられる性能が求められるんですね。

 

崩れないでいられるようにするということは、ただ単に燃えないというだけではだめなんです。

火にさらされて表面が焦げ焦げになってしまったとしても、きちんと建物を支えられるだけの強度は保てる必要があるということです。

 

もっと言えば、防火構造みたいに建物の表面だけでなくて、建物を支える構造そのものの性能が重要になってくるということですね。

 

「鎧をまとったガリガリ君」と「鎧をまとったマッチョマン」ぐらい違います

防火構造と耐火構造というのは、言ってみれば、「鎧をまとったガリガリ君」と「鎧をまとったマッチョマン」ぐらい違います。

表面は同じようなものなのですが(耐火構造のほうが性能が上ですが)、中身が全然違うんです。

 

防火構造は鎧をまとったガリガリ君みたいなものです。

 

ガリガリ君といってもアイスのガリガリ君じゃありません。

アイスのガリガリ君は結構マッチョです。

 

そうではなく、筋肉がない細い人ということですね。

そういう人であっても、鎧を着れば防御力は上げることができます。

 

刀や矢から身を守ることができますよね。

でも、体そのものは弱いままです。

 

一方、耐火構造というのは、鎧をまとったマッチョマンみたいなものです。

 

鎧をまとって防御力が上がるのは同じなのですが、そもそも、体が違うということですね。

例え、鎧を失うことになったとしても、体そのものがマッチョなので、自力で刀や矢から身を守ることができるということです。

 

ちょっと変な例えですが、分かりやすいのではないかと思います。

 

普通の木造住宅と防火構造の木造住宅は、外壁など以外はそれほど変わりません。

構造材などは同じものが使われます。

 

ガリガリ君のままです。

 

でも、普通の木造住宅と耐火構造の住宅は全然違います。

 

表面は同じようなものであっても、構造が全然違うんです。

ガリガリ君とマッチョマンぐらいの違いがあります。

 

まとめ

というわけで、耐火構造と防火構造の違いについてお話しました。

 

似たような言葉ですが全然違います。

求められる性能が違うとも言えます。

 

防火構造の場合には「もらい火」にならないことが最も求められます。

「お隣の家が火事になったときに自分の建物を火から守ることができるのか?」という視点です。

 

そのために、外壁や軒裏などに30分間は燃えずにいられる防火材を使います。

なので、防火構造であっても、自身の火事にはそれほど強くはなかったりします。

 

構造材は普通の木造住宅と同じですからね。

 

一方、耐火構造は自身が火事になったときにでも崩れずにいられるかが最も求められます。

少なくとも45分以上は崩れずにいられることが求められます。

 

火事が起きても避難するための時間を確保するためですね。

なので、耐火構造の場合には構造材そのものの性能も求められることになります。

 

関連記事:防火地域に木造住宅は建てられるんでしょうか?

関連記事:準防火地域で無垢材を使った木造住宅を建てることはできる?

関連記事:「不燃材」「準不燃材」「難燃材」にはどんな違いがあるんでしょうか?

関連記事:不燃化特区ならリフォームの場合でも助成金を貰えるんでしょうか?

 

投稿者プロフィール

山河直純
山河直純住宅不動産研究家
一級建築士受験資格保有。建築家が設計した住宅、築40年以上のヴィンテージマンション、ハウスメーカーの住宅などなど、住宅全般をこよなく愛しています。特に狭小住宅好き。

家を高く売りたいなら知っておきたいこと

もし、あなたが家を高く売りたいと思っているのであれば、
これだけは知っておいたほうがいいかもしれません。