準防火地域で無垢材を使った木造住宅を建てることはできる?

地域によっては、第一種低層住居専用地域であっても準防火地域に指定されていたりします。

東京都23区内ではだいたいそうなのではないでしょうか?

 

東京都23区内に無垢材を使った家を建てたいという人もいると思います。

準防火地域でも、無垢材を使った木造住宅というのは建てることができるんでしょうか?

 

フローリングなどの「内装」に使うだけなら大丈夫です

準防火地域であっても、フローリングなどの内装になら無垢材を使うことができます。

 

無垢材を使いたいという人であっても、家全部を無垢材で作りたいという人は少数派だと思います。

「構造材とか窓のサッシとか外壁にも必ず無垢材を使いたい!」という人は少ないのではないかと思います。

 

確かにすべてが無垢材で作られた家というのは魅力的です。

 

でも、実際のところは「無垢材を使う=フローリングに無垢材を使う」という人がほとんどなんじゃないでしょうか。

準防火地域であっても、フローリングに無垢材を使うことはできますので安心してください。

 

準防火地域では最低でも「防火構造」にする必要があります

準防火地域でも、内装には無垢材を使うことができます。

 

「内装」に限定されているのには理由があります。

準防火地域に建物を建てるには、次の4つのうちのどれかとして建てなければいけません。

 

「耐火建築物」

「準耐火建築物」

「技術的基準に適合した建築物」

「防火構造をもつ建築物(以下、防火構造)」

 

です。

 

この中で、1番規制がゆるいのが「防火構造」です。

木造住宅の場合には、防火構造さえ満たせば建築が許可されることが多いです。

 

防火構造というのは、簡単に言えば、お隣が火事になったとしても巻き添えにならない構造です。

 

お隣の火があたる可能性のある「外壁」と「軒裏」には使えません

お隣の家が火事になれば、燃え広がった火が、自分の家の外壁にあたりますよね。

 

もし、そこに無垢材が使われていたらどうなるでしょうか?

良い無垢材ほどに、良く乾燥しています。

 

火にさらされると、あっという間に燃えて表面が茶色く焦げてしまいます。

 

木材の場合は、表面が茶色く焦げて炭化するので、すぐにすべてが燃えるというわけではありません。

でも、ジワジワと炭化が進み、無垢材でできた外壁は崩れ落ちることになります。

 

ちなみに、炭化のスピードは一般的には1分間で約1mmと言われています。

10分で10mmということですね。

 

外壁の厚みが14mmであれば、14分ちょっとで外壁が崩れ落ちるということですね。

 

ちなみに、防火構造というのは、火にさらされても30分間は燃えずにいられる構造のことを言います。

火にさらされても30分は火が立ち上らない防火材を使います。

 

一方、無垢材の場合には、燃え始めるまでの時間はあっという間です。

なので、防火構造として家を建てる場合には、外壁と軒裏には無垢材を使うことができません。

 

2階建てまでなら「構造」にも無垢材を使えます

準防火地域でも、「内装」になら無垢材を使うことができるとお話しました。

でも、2階建てで、かつ、500平米以下であれば「構造材」にも無垢材を使うことが可能です。

 

2階建てで500平米以下であれば、防火構造で木造住宅を建てることができます。

 

防火構造では、火があたるかもしれない場所に30分は燃えない材料を使う必要はあるのですが、それ以外には特に指定はありません。

(屋根には瓦やスレートなどの不燃材を使う必要があります)

 

家の構造材に無垢材を使ってもいいということです。

 

まあ、構造材に無垢材を使う人というのは少ないかもしれないですけどね。

ただ、吹き抜け部分を作ると、その空間に梁が通ることになります。

 

そうなると、「構造材にも無垢材を使いたい!」という人もでてくるのではないでしょうか。

 

2階建てで500平米以下の木造住宅ならそれが可能になります。

 

3階建てにしたいなら構造を「耐火仕様」にする必要があります

一方、3階建て以上になってくると話が変わってきます。

 

3階建てで500平米以下の場合、求められるのは「防火構造」ではなくて「技術的基準に適合した建築物」になります。

ここで言う技術的基準というのは、火事になったとしても簡単には家が崩れないことを言います。

 

具体的に言えば、燃えやすい構造材を使ってはいけないということです。

無垢材は使えません。

 

もっと、具体的に言えば、準耐火建築物と同じ基準の「構造材」が求められます。

準耐火建築物では、火事になっても45分は燃えないことが求められます。

 

そして、外壁にも45分間は燃えない材料が求められます。

防火構造よりも15分長いですね。

 

「技術的基準に適合した建築物」の場合には、外壁は防火構造の基準のままでいいんです。

 

つまりは、構造体は45分は燃えないこと、そして、外壁は30分は燃えないことが求められるということですね。

極めて準耐火建築物の基準に近くなります。

 

まとめ

というわけで、準防火地域で無垢材を使った木造住宅を建てることはできるのかというお話をしました。

 

フローリングなどの内装に無垢材を使うということはできます。

ただ、家全体を無垢材で建てるということはできません。

 

というのも、準防火地域で木造住宅を建てようとすると「防火構造」を求められるからです。

お隣が火事になって、自分の家の外壁や軒裏に火があたりつづけたとしても、30分は燃えずにいることが求められます。

 

なので、外壁や軒裏には無垢材を使うことができません。

 

また、2階建てなら構造材にも無垢材を使うことができますが、3階建てになると、耐火性のある材料が求められるので無垢材は使えません。

 

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投稿者プロフィール

山河直純
山河直純住宅不動産研究家
一級建築士受験資格保有。建築家が設計した住宅、築40年以上のヴィンテージマンション、ハウスメーカーの住宅などなど、住宅全般をこよなく愛しています。特に狭小住宅好き。

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