住み替えをおこなう前に知っておきたい基礎知識
住み替えをおこなう前に知っておきたい基礎知識についてお話します。
「住み替えをしようと思っているんだけれども、何から始めればいいのかがわからない。」
「住宅ローン返済中なんだけれども、住み替えをすることってできるのかな?」
「住み替えって、家を売却することを優先するべき?それとも、買いたい家を見つけるほうが先?」
そう思うならぜひ最後まで読んでみてください。
住み替えとは?
住み替えとはどういう意味で使われるんでしょうか?
現状に合った住宅へ引越しをすること
住み替えとは、今住んでいる家から、現状に合った住宅へ引越しをすることです。
今住んでいる家と、現状が合っていないときにおこなわれます。
たとえば、1LDKのマンションに家族4人で住むのはちょっと狭いですよね。
そんなときに、1LDKから2LDKのマンションに住み替えがおこなわれることがあります。
今住んでいる家を売却して「新しい」家を購入することを指すことが一般的
住み替えというのは、現状に合った住宅へ引越しをすることです。
ワンルームの賃貸から1LDKへの賃貸への引越しも住み替えだと言えます。
結婚をするとワンルームの賃貸から1LDKの賃貸へ引越しをすることもあります。
でも、それを住み替えと呼ぶ人は少ないのではないでしょうか。
住み替えというのは一般的に、今住んでいる家を売却して、新しい家を購入することを指すことが多いです。家を所有していることを前提に使われることが多いです。
住宅購入者の約15%が住み替えをしています
住み替えをおこなう人はどれくらいいるんでしょうか?
国土交通省の29年度版住宅市場動向調査(P11)によると、住宅を購入した約15%の人が実際に住み替えをおこなっているようです。
6〜7人に1人は住み替えをおこなっている計算です。
住み替えがおこなわれる6つの理由
住み替えがおこなわれる6つの主な理由についてお話します。
家族が増えたり減ったりすることによる住み替え
もっとも多い理由は家族構成の変化による住み替えです。
赤ちゃん、子ども、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、ペット、家族構成は時間とともに変化していきます。増えたり減ったりしていきます。
家の大きさは同じなのに、家族が増えたり減ったりすると、家が狭くなってしまったり、反対に広すぎてしまったりするようになります。
そんなときに住み替えがおこなわれることがあります。
自然豊かな環境を求めての住み替え
自然豊かな環境を求めて住み替えがおこなわれることもあります。
最近では田舎暮らしに憧れる人も増えてきています。
「都市部での忙しい生活に疲れてしまったので、田舎に引越しをしてのんびりととした生活を送りたい。」
そんなときに、住み替えがおこなわれることがあります。
利便性を求めての住み替え
利便性を求めて住み替えがおこなわれることもあります。
郊外の戸建住宅から、都心マンションへの住み替えなどです。
高齢者の方に多い傾向もあります。
歳をとると車の運転が難しくなってきます。75歳以上になると運転免許の更新に認知症テストが加わります。高齢者による交通事故も増えているので、自主的に車の免許を返納する人も少なくありません。
でも、郊外に住んでいる場合には、スーパーなどの買い物に車がないと不便になってきます。
そこで、身近なところですべての用事を済ませられる都心に住み替えるという人も増えてきています。
病院が近くなるというメリットもあります。
ご近所トラブルによる住み替え
ご近所トラブルが原因で住み替えがおこなわれることもあります。
たとえば、騒音。
お隣さんが夜中まで大音量で音楽を聞いているとか、夜中の車の出入りが多くてエンジン音がうるさかったりなどです。
そして、人間関係。
郊外だと町内会に入会しなければならないこともあったりします。田舎であれば、人が少ない分、人間関係も濃くなっていきます。それに馴染めない人にとっては、人間関係が希薄な都心のほうがいいかもしれません。
通勤時間を短縮するための住み替え
通勤時間を短縮するために住み替えがおこなわれることもあります。
今の時代は終身雇用制が崩れてきています。一生同じ会社に勤める可能性というのは以前に比べればかなり落ちてきています。
一生その会社に勤めるつもりで近くに家を購入したのに、転職したら職場が遠くなってしまったという話は少なくありません。
家の老朽化による住み替え
家の老朽化によって住み替えがおこなわれることもあります。
他の理由とセットになることが多いです。
たとえば、「家も老朽化してきたし家を取り壊して土地だけ売って利便性の高いマンションに引越しをしようか?」などです。
老朽化が住み替えのキッカケになるということです。
住み替えをせずに建て替えをするという選択肢もあります。
住み替えがおこなわれる2つのタイミング
住み替えがおこなわれることが多いのは次の2つのタイミングです。
リタイアをして老後を迎えたとき
仕事を定年退職して老後を迎えたときです。
国土交通省の29年度版住宅市場動向調査によると住み替えをおこなう人の50%ほどは60歳以上のようです。
たとえば、65歳で仕事を定年退職したとします。
30歳のときに今の家を購入しているのであれば築35年です。
老朽化もすすんでいるでしょう。
子どもたちも独立してそれぞれの家を持っています。
そうなると、「今の家は売ってしまって、子どもたちの近くに家を買って引越しをしようかな?」と考えるかもしれません。
もちろん、リフォームをして住み続けるという選択もあります。
夫婦2人暮らしだと何部屋か使われずに余りますが、年末年始やお盆など、子どもたちが実家に帰ってきたときに使われることになります。
海外では使われなくなった子どもたちの部屋を使ってB&Bをおこなう人達もいるようです。
B&Bというのはベッド&ブレックファーストのことで、いってみれば民宿(民泊)みたいなサービスのことです。
子どもが生まれたとき
子どもの誕生がキッカケに住み替えがおこなわれることも多いです。
ここで言う住み替えは、賃貸から、分譲戸建てや分譲マンションへの住み替えです。
子どもが生まれたばかりの頃は、ベビーベッドが置けるスペースがあればなんとかなります。
でも、赤ちゃんはどんどんと成長して、ちょこまかと動き回る幼稚園児や小学生へと成長していきます。
1LDKの賃貸マンションでは狭くなってしまうのは容易に予想できます。
そこで、分譲戸建てや分譲マンションへの住み替えが検討されます。
妊娠が発覚したときから検討しはじめる人もいれば、子どもが生まれてからしばらくたってから検討しはじめるという人もいます。
新築と中古どちらに住み替えるのがいい?
新築と中古はどちらに住み替えるのがいいんでしょうか?
中古住宅を選ぶ人は2〜3割と増えています
中古住宅を選ぶ人の割合が増えてきています。
国土交通省の29年度住宅市場動向調査 によると、2〜3割の人は中古住宅を選んでいるようです。
特に新築マンションから中古マンションへ住み替える人の割合が増えています。
戸建てに比べれば構造が頑丈で耐用年数が長いマンションの場合は、中古でも戸建てほどには気にならないというところがあります。
リノベーションをおこなうことを前提に中古マンションを購入するという人達も確実に増えてきています。
リノベーションというのは、構造だけをそのまま残して、内装やレイアウトをガラッと変えてしまうことをいいます。リフォームとも言えますが、リノベーションの場合は新築時に戻すことを目指すものではなく、まったく別のものにすることを目指すという特徴があります。
今後は賃貸への住み替えも増える?
賃貸へ住み替える人の割合はだいたい1割弱です。
それほど多いとは言えません。
ですが、今後は賃貸への住み替えが増える可能性があります。
今後は、日本の人口が減り始めます。
住宅の総数は変わらないか増え続けているのに、人口は減っていくことになります。
そうなると、空き家が増えることになります。
空き家が増えるということは、家が余っているということです。
住宅や土地の価格は、今後は値下がりしていくことが予想されています。
2040年には地価は今の約6割ほどに下がると予想されています。
そうなると、「家は所有するよりも賃貸で借りたほうがいいのでは?」という考えもでてきます。
住み替えは売り先行と買い先行どちらがいい?
家を先に売却することを「売り先行」、家を先に購入することを「買い先行」と言います。
住み替えは売り先行と買い先行のどちらがいいのでしょうか?
焦らずに住み替えをおこないたいなら売り先行
住み替えをおこなうなら売り先行が基本です。
売り先行というのは、家の売却が決まってから買いたい家を探しはじめることです。
焦らずに住み替えをおこないたいなら売り先行にするべきです。
売り先行であれば、家がいくらで売れるのかが分かってから新しい家を購入するので、資金繰りが楽になります。
たとえば、家が2500万円で売れたとします。
ローン残高が2300万円だった場合、手元に200万円残ります。
新しい家が3000万円だった場合、200万円を頭金に2800万円の住宅ローンを組めばいいのだと簡単に計算することができます。
のちほどお話しますが、住み替えローンを組むときも売り先行が基本です。
たとえば、家が2000万円で売れたとします。
ローン残高が2300万円だった場合、300万円のローンが残ります。
新しい家が2500万円だった場合、2500万に300万円をプラスした2800万円を住み替えローンで用意する必要があるとわかります。
売り先行は引越しが2回必要になるかも
売り先行のデメリットは引越しの回数です。
2回の引越しが必要になるかもしれません。
売り先行であっても、新しい家の購入がスムーズにいけば、今の家から直接新居に引越しをすることができるかもしれません。
でも、新しい家の購入に時間がかかる場合は、一旦、賃貸などの仮住まいに引越しをする必要があります。
資金力があるなら買い先行もあり
資金力があるのであれば買い先行もありです。
今の家が相場よりもかなり安い値段で売れたとしても問題ないぐらいの資金力です。
つなぎ融資を受けるときもそうです。
買い先行におけるつなぎ融資というのは、家を売却したお金を使って返済することが前提の融資です。
たとえば、4000万円の家を購入したとします。
自己資金1000万円と金融機関から3000万円のつなぎ融資を受けての購入です。
不動産会社から今の家が3000万円で売れるとの査定を受けてのつなぎ融資でした。
でも、実際には2500万円で売却することになりました。
よくある話です。
この場合、家を売却したお金だけではつなぎ融資を返済することができません。
500万円を自己資金の中から返済にあてる必要があります。
家を売却せずに賃貸にだすという選択肢もあります
今の家を賃貸にだして住み替えをおこなうという選択肢もあります。
一般社団法人移住・住みかえ支援機構(以下、JTI)という組織があります。
50歳以上の人を対象に「マイホーム借上げ制度」というサービスをおこなっています。
一般市場で賃貸にだすよりも賃料は安くなってしまうのですが、家が空室になってしまったときでも賃料を保証してくれるというサービスになっています。
安定した賃料を得たい人にとっては魅力的かもしれません。
JTI提携ローン(提携できる銀行は限られますが)というものも用意されており、得られる賃料で返済していく住宅ローンを組むこともできます。
家を売却せずに賃貸にだすことによって住み替えをおこなうことができます。
住み替えをおこなうときの資金繰り4つのパターン
住み替えをおこなうときの資金繰りの4つのパターンについてお話します。
新たに住宅ローンを組む
家を売却すれば住宅ローンが完済できる人、
家を売却しても住宅ローンが残ってしまうけど自己資金で返済できる人、
家のローンは完済済みという人、
などはこのパターンになります。
家を売却すれば住宅ローンが完済できるし、抵当権も抹消することができるパターンです。
そういう場合は、残ったローンを次のローンに引き継がせたりする必要もありません。
もっともシンプルな資金繰りの方法と言えます。
住み替えローンを組む
今の家を売却しても住宅ローンが残るし自己資金で完済できないという人はこのパターンになります。
住宅ローンが残ってしまう場合に利用されるのが住み替えローンです。
新しい家を買うための住宅ローンを組むときに、住宅ローンの残りの額も組み込みます。
たとえば、5000万円の家を新たに購入するとします。
今の家は3000万円で売却できましたが、500万円のローンが残ったとします。
住み替えローンを組むときには、新しい家の購入代金の5000万円にプラスしてローンの残りである500万円も同時に借り入れます。
合計5500万円のローンを組むということです。
ちなみに、住み替えローンにはひとつ注意点があります。
家の売却と購入を同じタイミングでおこなう必要があります。
家を売却するときの決済日と、新しい家を購入するための決済日を同じ日にする必要があります。
二重ローンを組む
資金に余裕がある人は二重ローンを組むというパターンもあります。
二重ローンというのはその名の通り二重にローンを組むことです。
買い先行の場合に二重ローンになることがあります。
今の家のローンを組んだ状態で、さらに新しいローンを組むということです。
年収1000万以上の安定した仕事についていない限り、二重ローンの審査に通ることは難しいとも言えます。
二重ローンを組むと、月々のローンの支払い額は2倍ほどに跳ね上がります。
月々15万の支払いであれば、家が売れるまでは月30万円を支払うことになります。
つなぎ融資を受ける
住宅ローンも完済しているし、新たに住宅ローンを組む必要もないという場合でも、つなぎ融資が必要になることがあります。
家を売却したお金で返済をすることを条件に金融機関からお金を借りることをつなぎ融資と言います。
買い先行での住み替えの場合、家の売却が遅れることがあります。
「気に入った家が見つかったのだけれども、まだ家が売れないから購入資金が用意できない。」
そんなときに利用されるのがつなぎ融資です。
たとえば、家が5000万円で売れる予定だったとします。
購入したい家が同じく5000万円だった場合、家を売却したお金で返済することを条件に5000万円のつなぎ融資を受けて家を購入します。
そして、家が5000万円で売れたら、そのまま、つなぎ融資の返済にあてます。
もし、5000万円ではなく4700万円で売れたら、残りの300万円は自己資金で補います。
ちなみに、つなぎ融資は住宅ローンに比べて金利が高くなっています。
3%ほどの高い金利を支払う必要があります。
5000万の場合は半年借りると75万円ほどの金利を支払うことになります。
50%の人は住宅ローン返済中に住み替えをおこないます
国土交通省の29年度版住宅市場動向調査によると、50%ほどの人が住宅ローン返済中に住み替えをおこないます。
新たにローンを組んだり、住み替えローンを利用する人も多いということです。
住み替えにあたって新たにローンを組むときには次の2点を気をつけましょう。
- お金を借りすぎない
- 返済期限を伸ばさない
住み替えローンを利用すると、以前よりもローンの額が増えてしまうことが一般的です。
住み替えローンというのは、新たな住宅ローンにプラスして以前のローンの残りも組み込んだローンだからです。
もし、収入が増えているのであれば別ですが、それほど収入も増えていないようであれば、住み替えだからといって、借り入れるお金の額は増やさないことが大切です。
そして、返済期限も以前のままにしておくことが大切です。
場合によっては定年退職後までローン返済しなければならなくなってしまいます。
住み替えには3つの税金が関わります
住み替えには3つの税金が関わってきます。
【売却時】家の売却で利益がでてしまったとき税金がかかります
家の売却には所得税と住民税がかかることがあります。
家の売却で利益がでてしまったときです。
家を購入したときの値段よりも、家が高く売れてしまった場合、うれしい反面、税金がかかってしまいます。
ただ、売れたのが自宅の場合には話が少し違ってきます。
自宅に対しては、3000万円までの控除が認められています。
たとえば、5000万円で購入した家が、7000万円で売れたとします。
2000万円の売却益ですが、自宅であれば3000万円までの控除が認められているため、所得税と住民税は支払う必要がありません。
【売却時】家の売却で損をしてしまったとき税金が還付されます
家の売却で税金がもどることもあります。
家の売却で損をしたときです。
あなたの給与所得にかかっていた所得税と住民税がもどってきます。
たとえば、5000万円で購入した家を4000万円で売却したとします。
1000万円の損失です。
この損失を、あなたの給与所得の課税額から控除することができます。
たとえば、課税対象所得が500万円だったとします。
1000万円を控除すると課税対象所得は0円になります。
支払った所得税と住民税がすべてもどってきます。
そして、損失は4年後まで繰越することができます。
さきほどの例で言えば、翌年の課税対象所得500万円も全額控除されるということです。
【購入時】住宅ローン減税を受けることができます
新しい家をローンで購入すると、住宅ローン減税を受けることができます。
住み替えローンでも住宅ローン減税を受けることができます。
ローン残高の1%の額を10年間、課税所得から控除することができます。
たとえば、4000万円のローンを組んだ場合には、課税所得から40万円控除することができます。
これを10年間続けることができます。
年々ローン残高は減っていくので、単純に40万✕10回の400万円を控除できるというわけではありませんが、370万円ほどの控除は受けられることになります。
まとめ
住み替えをおこなう前に知っておきたい基礎知識についてお話しました。
住み替えで大事なのは「資金繰り」です。
家の売却と購入を並行しておこなうことになるので、資金の流れも煩雑になります。
特に買い先行の場合には、家がいくらで売れるのかが分からない状態で家を購入することになるので、余裕を持った資金繰りが必要になります。
住み替えをおこなうときは売り先行にするのか?買い先行にするのか?
- 売り先行か
- 買い先行か
そして、資金繰りはどうするのかをしっかりと決めてからおこなうようにしましょう。
- 新たに住宅ローンを組む
- 住み替えローンを組む
- 二重ローンを組む
- つなぎ融資を受ける
投稿者プロフィール
- 一級建築士受験資格保有。建築家が設計した住宅、築40年以上のヴィンテージマンション、ハウスメーカーの住宅などなど、住宅全般をこよなく愛しています。特に狭小住宅好き。
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