市街化調整区域の家や土地を購入することのデメリットとは?
のんびりとした雰囲気の場所に住みたいと思った場合、気になった家や土地が「市街化調整区域」にあったということは少なくないかもしれません。
市街化調整区域の家や土地を購入するのには、何かデメリットというのはあるんでしょうか?
土地を買っても家を建てられないかも
結論から言えば、土地を買っても家を建てられないかもしれないというリスクがあります。
かなり致命的なデメリットなんじゃないでしょうか?
家を建てるには「建築確認申請」というものをおこなう必要があります。
市街化調整区域の土地に家を建てたいという場合、その建築確認申請をおこなうために「開発許可」を受ける必要があります。
市街化区域に家を建てるためには開発許可というものは必要ないのですが、市街化調整区域に家を建てるためには基本的には「開発許可」が必要になります。
市街化調整区域は基本的には建物を建ててはいけない区域だからです。
この「開発許可」を得ることが難しいんです。
のちほどお話しますが、例外というものもあるのですが、基本的には許可は下りないと考えておいたほうが無難です。
家が老朽化したときに建替えできないかも
家を購入する場合には「特に問題ないのでは?」と思うかもしれません。
確かに、すでに家が建っているのであれば、建築確認申請をおこなう必要はありません。
購入すれば実際に住み始めることができます。
でも、家というのは必ず老朽化していきます。
数十年後には家を建て替える必要がでてきます。
その時に、問題が発生します。
家を建て替えるためには建築確認申請が必要になるからです。
「家が老朽化したのでこんな感じに建て替えたいのですが?」と確認申請をおこなっても、「この土地は市街化調整区域だから家を建てることはできません」という答えが返ってくるだけになります。
市街化調整区域には基本的には家を建てることはできません
市街化調整区域というのは、基本的には新たに家を建てることはできない区域と考えておいたほうが無難です。
もちろん、例外もあるので新たに家が建てられることもあります。
だからといって、「頑張ればなんとか家を建てるための許可をもらうことができるんじゃないか?」とは考えないほうがいいです。
市街化調整区域には「調整」という言葉が使われているので、なんとなく柔らかい印象を受けるかもしれません。
でも、感覚的には市街化「禁止」区域だと思っておいたほうがいいかもしれません。
農業や林業のために、自然豊かな環境を保つために意図的に建築が禁止されている区域、そう思っておくのがいいと思います。
例外は3つです
それでも、どうしても市街化調整区域の家や土地が気になるという場合には、例外について知っておきましょう。
考え方によって色々と例外はありますが、大きく分けると3つの例外があると思います。
ちなみに、農業や林業に従事するというのは例外には含めていません。
農業や林業に従事するのであれば、問題なく市街化調整区域の土地に家を建てることができるようになります。
だって、家がなければ農業も林業も営むことができませんからね。
なので、どうしても市街化調整区域に住みたいという場合には、農業や林業に従事するという手もあります。
その土地に親族が20年以上住んでいること
1つめの例外、それは、その土地に親族が20年以上住んでいることです。
この例外が、もっとも許可が下りやすいと思います。
6親等までの親族までOKなので、わりと遠い親戚であっても大丈夫かもしれません。
具体的に言えば、「またいとこ」まで大丈夫ということです。
あなたから見て、両親の兄弟の子どもが「いとこ」、おじいちゃん・おばあちゃんの兄弟の孫が「またいとこ」です。
結構、範囲が広いのではないでしょうか。
その親族が20年以上その土地に住んでいるのであれば家を建てることが許可されます。
仕事のために東京などの都心で暮らしていたけれども、老後は田舎に帰りたいという場合には、この例外が適用されやすいかもしれません。
ちなみに、この例外は都市計画法34条12号で定められています。
50軒以上の住宅が密集している場所であること
2つめの例外、それは、市街化調整区域なんだけれども、市街地のように住宅が密集している場所ということです。
具体的には50軒以上の建物が密集していることが求められます。
家というのはインフラ設備が求められます。
水道とかガスとか電気とかですね。
ガスはプロパンガス(ガスボンベ)を使って供給することもできますが、水道と電気は水道管や電線をその家まで引いてくるということが必要になってきます。
当然、そういったインフラ設備を整えるのにはお金がかかります。
そして、家が密集してくれていたほうが、効率が良いわけです。
あんまり離れたところにポツンと戸建てが建っていたりすると、その1軒のために水道管と電線を引かなければいけなくなって非効率的になってしまうんですね。
実のところ、市街化区域と市街化調整区域の2つに分けられているのはそういった理由もあります。
市街化区域に家が密集してくれていると、インフラ設備を整えるのも楽ですから。
とはいえ、市街化調整区域であっても、ある程度家が密集しているところであればインフラ設備はすでにある程度整っているので、例外的に家を建てるのを許可しますということです。
この例外は、都市計画法34条11号で定められています。
市街化調整区域に指定される前から建っている家であること
3つめの例外、それは、市街化調整区域という区域ができる前からその土地に家が建っている場合です。
「市街化調整区域」という言葉はずっと昔からあったわけではありません。
高度成長で都市が無計画に拡大していっていたので、秩序を保つために市街化区域と市街化調整区域という2つの区域に都市を分割しました。
そのことを「線引き」と言ったりします。
だいたい、1970年ごろに線引きされていることが多いです。
さきほども言ったように、インフラ設備を整える目的もあって線引きされたんですね。
とはいえ、線引きされる前からその土地に住んでいる人にとっては急な話ですよね。
「今まで普通にここに住んでいたのに、急に市街化調整区域ですよって言われても・・」という感じでしょうか。
しかも、市街化調整区域に家を建てるには許可が必要になります。
つまりは、家を建て替えるのにも許可が必要だということです。
線引きされる前からそこに住んでいる人にまでその決まりが適用されるのはあんまりだということで、「既存宅地」と呼んで例外化しました。
既存宅地であれば許可なく家を建て替えることができるようになったんですね。
とはいえ、この「既存宅地」という例外は2018年現在では廃止されてしまっています。
ただ、基本的には廃止されているのですが、行政によっては、まだその例外を認めているところもあります。
そういった場所であれば、1970年前から建っている家を購入して、許可なくその家を建て替えるということが可能になっています。
まとめ
というわけで、市街化調整区域の家や土地を購入することのデメリットについてお話しました。
基本的には市街化調整区域の家や土地を購入することはハードルが高いと思っておいたほうがいいです。
自然環境が良かったり、価格が安かったりするので魅力的に感じるかもしれませんが、家を建てたり、建て替えたりするのに許可が必要になります。
そして、その許可というのは基本的には下りません。
ただし、例外が3つあります。
1つめは、親族がその土地に住んでいるということ。
2つめは、市街化調整区域なんだけれども、50軒以上の家が密集している場所であること。
ただ、それでも認められない可能性も大いにありますけどね。
行政の判断によるところが大きいです。
3つめは、市街化調整区域に指定される前から建っている家(既存宅地)を購入して、建て替えることです。
ただし、2018年現在では既存宅地の例外は廃止されています。
でも、行政によっては今でもそれを認めているところもあったりします。
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投稿者プロフィール
- 一級建築士受験資格保有。建築家が設計した住宅、築40年以上のヴィンテージマンション、ハウスメーカーの住宅などなど、住宅全般をこよなく愛しています。特に狭小住宅好き。
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