燃え代設計で省令準耐火の基準を満たすことはできるんでしょうか?
準耐火建築物の場合、燃え代設計によって無垢材でも柱や梁をむき出しに使うことができます。
火事になって燃えたとしても、燃え残った部分で建物を十分に支えることができるのであればいいよということです。
ということは、省令準耐火の場合でも、燃え代設計によって無垢材の柱や梁をむき出しにすることができるんでしょうか?
省令準耐火では燃え代設計は使えません
結論から言えば、省令準耐火では燃え代設計は使えません。
燃え代設計が認められるのは準耐火建築物として建物を建てるときだけです。
準耐火建築物というのは建築基準法によってその仕様が決められています。
一方、省令準耐火というのは、特に建築基準法によって決められているわけではありません。
省令準耐火という言葉は建築基準法には出てきません。
というのも、省令準耐火というのはフラット35でお馴染みの住宅金融支援機構が作ったオリジナルのものだからです。
火災保険に入る場合、耐火建築物や準耐火建築物として建てられたものは保険料が安くなります。
でも、建築基準法による耐火建築物や準耐火建築物としての基準は満たしていなくても、住宅金融支援機構が定めた一定の基準を満たすことができるのであれば、火災保険料を安くしましょうということで作られたのが省令準耐火です。
目に見える部分すべてを防火材で覆う必要があります
省令準耐火では、準耐火建築物ほどの耐火性能は求められません。
でも、目に見える部分はすべて防火材で覆う必要はあります。
例えば、無垢材の柱や梁を使ってむき出しに仕上げたいと思っても、省令準耐火を満たすためには柱や梁の表面を防火材で覆わなければいけません。
無垢材を使う意味があまりなくなってしまいますよね。
でも、防火材で覆わなければ省令準耐火とは認められずに火災保険料を安くすることはできません。
省令準耐火はツーバイフォー向けのものです
実は、省令準耐火というのは、もともとはツーバイフォー工法で建てられた家のためのものです。
ツーバイフォーというのは、面構造で家を建てていく工法です。
言ってみれば、ダンボールをつなぎ合わせて家を建てていくのに似ています。
目に見える部分はすべて面になります。
一方、軸組工法の場合には、線で家を建てていく工法です。
柱や梁ですね。
壁がなくても建物としての構造が成り立つ建て方です。
そして、必要な部分に壁を作っていきます。
なので、柱や梁がむきだしになっている部分もでてきます。
言ってみれば、ツーバイフォーの場合には面に防火材を使いさえすれば自然に省令準耐火としての基準を満たしてしまうんです。
そして、省令準耐火というのはツーバイフォーの普及を後押しするために作られたものなんです。
「火災保険料が安くなるのであればツーバイフォーで建てようかな?」って思いますよね。
無垢材をとるか保険料の安さをとるか?
燃え代設計でも省令準耐火を満たすことができるのか気になるということは、柱や梁に無垢材を使ってむき出しの仕上げにしたいけれども、火災保険料も安くしたいということだと思います。
ジレンマですよね。
火災保険料って数十年にわたって加入し続けるものです。
保険料が安くなるかならないかによって、その額は2倍近くも変わってきます。
省令準耐火として認められない場合は、10年間で24万円の保険料がかかるところが、省令準耐火として認められると12万円ほどになったりなったりします。
30年で考えると36万円の差がでるということですね。
準耐火建築物にしてしまうのもありです
もし、無垢材にもこだわりたいし、火災保険料も安くしたいという場合には、省令準耐火を満たそうとするのではなく、いっそのこと準耐火建築物として建ててしまうという選択肢があります。
準耐火建築物として建てるのであれば、燃え代設計が認められるからです。
そして、火災保険でも耐火構造として認められて保険料が安くなります。
ただし、当然のことながら建築費は高くなります。
おそらく、火災保険料を安くすることによって浮く費用よりも高くなると思います。
プラス36万円で準耐火建築物にすることは難しいと思います。
でも、それ以上に安心感のほうが上回るのであれば、検討してみるのもいいかもしれません。
準耐火建築物であれば、火事も起こりにくくなりますし、お隣の家が火事になったとしても、巻き添えになりにくくなります。
だからこそ、火災保険料も安くなるんですけどね。
まとめ
というわけで、燃え代設計で省令準耐火の基準を満たすことはできるのかというお話をしました。
省令準耐火では燃え代設計は認められていません。
目に見える部分はすべて防火材で覆わなければいけません。
というのも、省令準耐火というのはツーバイフォー工法の家を普及させるためにできたのが、そもそもの始まりだからです。
ツーバイフォーで家を建てると自然と省令準耐火を満たすようになっています。
軸組工法で柱や梁をむき出しにしたいと思うと、省令準耐火を満たすことは難しくなります。
そんな時は、省令準耐火ではなく、いっそのこと準耐火建築物として建てることを検討してみるのもいいかもしれません。
燃え代設計を使えるので、無垢材の柱や梁をむき出しにすることができますし、火災保険料も安くすることができます。
その分、建築費も上がってしまいますけどね。
関連記事:「省令準耐火」と「準耐火」ってどんな違いがあるんでしょうか?
関連記事:準防火地域で無垢材を使った木造住宅を建てることはできる?
投稿者プロフィール
- 一級建築士受験資格保有。建築家が設計した住宅、築40年以上のヴィンテージマンション、ハウスメーカーの住宅などなど、住宅全般をこよなく愛しています。特に狭小住宅好き。
最新の投稿
- 2019.12.09税金・相続・法律「相続登記」と「所有権移転登記」の違いは何なんでしょうか?
- 2019.12.06住宅性能・住宅診断家は住まないと劣化するというのは本当なんでしょうか?
- 2019.12.06登記「表題登記(表示登記)」と「権利登記」はどう違う?
- 2019.12.06税金・相続・法律相続した不動産が未登記だった場合にはどうするのがいいんでしょうか?
家を高く売りたいなら知っておきたいこと
これだけは知っておいたほうがいいかもしれません。