「省令準耐火」と「準耐火」ってどんな違いがあるんでしょうか?

似たような言葉に「省令準耐火」と「準耐火」という言葉があります。

 

どちらにも準耐火という言葉が付いているので、似たようなことを表しているようにも感じますが、実は結構違います。

一体、「省令準耐火」と「準耐火」にはどんな違いがあるんでしょうか?

省令準耐火はどちらかというと「防火構造」に近いです

省令準耐火というのは、準耐火建築物と同じようなものだと思うかもしれませんが、違います。

省令準耐火というのは、実際のところは「防火構造」に近いものです。

 

建物の耐火性や防火性には3つのグレードがあります。

 

1番高いのが「耐火構造」です。

火事が起きたとしても1時間以上は燃えないように建てられます。

 

次に、「準耐火構造」です。

準耐火では45分までは燃えないように建てられます。

 

耐火よりも燃えるまでの時間が15分短くなっています。

 

その次が、「防火構造」です。

耐火ではなくて、防火という言葉に変わりました。

 

防火になると、求められるものがガラッと変わってきます。

耐火の場合には、火事が起こった場合にどうなのかということが求められます。

 

一方、防火の場合には、「お隣」が火事になったときにどうなのかということが求められます。

お隣の火の巻き添えにならないことが求められるんです。

 

なので、防火構造では外壁や軒裏の防火性だけが求められます。

自身が火事になったときのことはあまり考えられていません。

 

防火構造に「各部屋ごと」の防火性も付け加えたのが省令準耐火です

お隣の火にさらされても、30分は燃えないでいられるのが「防火構造」です。

省令準耐火というのは、そこに「各部屋ごと」の防火性も付け加えたものです。

 

例えば、1階の寝室で火が起こったとしても、20〜30分間は燃えないでいられることが求められます。

だいたいは、部屋の内側の壁に防火性のある石膏ボードが張られることになります。

 

普通の防火構造の場合には、そこまでは求められません。

外壁と軒裏にさえ防火材が使われていればいいんです。

 

一方、省令準耐火として認められるには、各部屋ごとにも防火材を使う必要があります。

もっと言えば、部屋と部屋の間の空間にも、火の延焼を防ぐための防火材が必要になります。

 

準耐火ではないけど、そこそこの耐火性は認めるよということ

準耐火というのは、火事になったとしても45分は燃えずにいられる建物です。

壁だけでなく、構造材にも45分は燃えずにいられる性能が求められます。

 

一方、省令準耐火は各部屋ごとの防火性はありますが、45分も持ちません。

石膏ボードなどの不燃材が使われますが、燃えずにいられるのは20〜30分ほどです。

 

また、構造材に防火性は求められません。

極端なことを言えば、構造材に無垢材を使っていても省令準耐火としての基準は満たすことができます。

 

「構造材に無垢材を使っていても、石膏ボードなどの防火材で覆われていればいいよ」という考え方なんですね。

 

省令準耐火としての基準を満たしていても、建築基準法での準耐火建築物としての基準を満たすことはできません。

でも、「そこそこの耐火性はあるということを認めるよ」というのが省令準耐火なんです。

 

ちなみに、省令準耐火であることを認めるのはフラット35でおなじみの住宅金融支援機構です。

 

省令準耐火は火災保険では「耐火構造」として認められます

省令準耐火は、建築基準法上では耐火構造として認められません。

でも、火災保険では、耐火構造として認められます。

 

火災保険の料金というのは、建物の構造によって変わってきます。

火災の可能性が低いほどに保険料が安くなります。

 

例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造のマンションなどの場合はM構造として分類されて、保険料は1番安くなります。

 

コンクリート造や耐火性のある木造住宅などの場合には、T構造として分類されます。

耐火建築物や準耐火建築物はもちろんT構造です。

 

でも、建築基準法は耐火構造ではありませんが、火災保険では省令準耐火を満たした建築物もT構造として認められます。

 

耐火構造を満たしていない建築物はH構造として分類されて、保険料は1番高くなります。

 

在来軸組よりもツーバイフォーのほうが省令準耐火にしやすいです

木造住宅の工法には、大きく分けて2つあります。

在来軸組工法とツーバイフォー工法です。

 

省令準耐火として認められるには、各部屋を防火材で覆わなければいけません。

実は、防火材で部屋を覆うのはツーバイフォー工法のほうがやりやすいです。

 

というよりも、ツーバイフォーの場合には、耐力壁に防火材を使えば、そのまま省令準耐火としての基準を満たしてしまうんですね。

 

ツーバイフォー工法というのは、簡単に言えば、面を組み合わせて家を建てていく工法です。

積み木ブロックを積み上げる感じと少し似ています。

 

一方、在来軸組工法というのは、線を組み合わせて家を建てていく工法です。

柱や梁などですね。

 

そして、必要な部分に板を貼って面にします。

 

なので、在来軸組工法の場合には、ツーバイフォー工法に比べて、省令準耐火としての基準を満たすのに手間がかかります。

 

まとめ

というわけで、「省令準耐火」と「準耐火」の違いについてお話しました。

 

省令準耐火というのは耐火という言葉が含まれていますが、実際のところは「防火構造」に近いです。

防火構造に、各部屋ごとの防火性も付け加えたのが「省令準耐火」なんですね。

 

建築基準法では省令準耐火というのは準耐火とは認められませんが、フラット35でお馴染みの住宅金融支援機構では、準耐火に準ずるとして、準耐火として認められます。

 

火災保険では構造によって保険料が変わってきますが、省令準耐火は耐火構造(T構造)として認められます。

 

ちなみに、省令準耐火という基準は、ツーバイフォー工法を普及させるために作られたという経緯があります。

ツーバイフォー工法なら、耐力壁に防火材を使えばそのまま省令準耐火としての基準を満たしてしまうからです。

 

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投稿者プロフィール

山河直純
山河直純住宅不動産研究家
一級建築士受験資格保有。建築家が設計した住宅、築40年以上のヴィンテージマンション、ハウスメーカーの住宅などなど、住宅全般をこよなく愛しています。特に狭小住宅好き。

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