準防火地域でいう「技術的基準」ってどういうことなのか?
準防火地域というのは、階高や広さによって満たすべき防火基準が4つに分かれています。
「耐火建築物」
「準耐火建築物」
「防火構造」
「技術的基準適合建築物」
の4つです。
この中で、分かりにくいのが「技術的基準適合建築物」です。
ここで言う「技術的基準」って一体どういうことなんでしょうか?
火事になっても簡単には倒壊しないこと
実は「技術的基準」という言葉は建築基準法ではたくさん使われています。
技術的基準という言葉が特定のなにかを意味するというわけではないんですね。
技術的基準という言葉を使うときは、必ず条件がつきます。
条件によってその意味合いが変わってきます。
「技術的基準適合建築物」の場合には、地階を抜かした階高が3階建てで、500平米以内の建物を建てるときに限った技術的基準になります。
一体、どんな技術的基準なんでしょうか?
簡単に言えば、例え火事が起きたとしても、そう簡単には建物が倒壊しないように建てなければいけません。
構造材に「耐火集成材」を使わなければいけないということです
火事が起きても建物が簡単に倒壊しないように建てるには、構造材に「耐火集成材」を使う必要がでてきます。
耐火集成材というのは、火にさらされても45分は燃えない上に、燃えたとしても、構造材としての性能は失わないものを言います。
つまりは、耐火集成材を使えば、火事が起きたとしても建物は簡単には倒壊しません。
でも、「準耐火建築物」とは違います
耐火集成材というと、耐火建築物や準耐火建築物を建てるときに使われるものです。
となると「技術的基準適合建築物というのは準耐火建築物のようなもの?」と思うかもしれません。
似ているのですが、まったく同じというわけではありません。
まったく同じであれば、わざわざ名称を変える必要はありませんからね。
準耐火建築物というのは、火事が起きても45分は燃えることなく、かつ、燃えたとしても建物が倒壊しないもののことをいいます。
そして、それは外壁や軒裏も含みます。
お隣が火事になったときに火があたりそうな部分には、45分は燃えない耐火材を使う必要があります。
外壁や軒裏は「防火構造」でOKです
技術的基準適合建築物の場合には、お隣が火事になったときに火があたりそうな部分には、耐火材を使うのではなく、防火材を使えばいいことになっています。
防火材というのは、火にさらされても30分は燃えないでいられる材料のことです。
耐火材の45分以上よりも短いですね。
言ってみれば、外壁と軒裏は「防火構造」でいいということです。
準防火地域であっても、2階建てで500平米以内であれば防火構造でいいということになっています。
防火構造というのは、耐火性は問われません。
火事になったときに建物が崩れないでいられることは求められません。
ただ、お隣が火事になったときに、巻き添えにならないことが求められます。
言ってみれば、技術的基準適合建築物というのは、外壁と軒裏だけは防火構造の準耐火建築物と言えます。
建築基準法施工令136条の2に記載があります
準防火地域で3階建ての場合の技術的基準というのは、建築基準法施行令「136条の2」に記載があります。
「地階を除く階数が3である建築物の技術的基準」です。
具体的にどんなことが書かれているんでしょうか?
少し抜粋します。
外壁が、防火構造であり、かつ、その構造が屋内側からの通常の火災時における炎及び火熱を有効に遮ることができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものであること。軒裏が防火構造であること。主要構造部である柱及びはりその他国土交通大臣が指定する建築物の部分の構造が、通常の火災により建築物全体が容易に倒壊するおそれのないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものであること。
引用:http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325CO0000000338_20180401_429CO0000000156&openerCode=1#1714
外壁と軒裏は防火構造であることと記載されていますね。
でも防火構造ではだめで、火災が起きたとしても建物全体が容易に倒壊するおそれが無い必要があるということが書かれています。
つまりは構造材には耐火材を使う必要があるということです。
ちなみに、建築基準法と建築基準法施行令は違うものなので注意が必要です。
建築基準法は107条までしかありません。
まとめ
というわけで、準防火地域でいう「技術的基準」とはどういうことなのかというお話をしました。
準防火地域で3階建てで500平米以内の建物を建てようとすると「技術的基準適合建築物」として建てる必要があります。
ここでいう技術的基準というのは、簡単に言えば、火事が起きたとしても簡単には倒壊しないことです。
なので、構造材には耐火集成材を使う必要があります。
とはいえ、準耐火建築物とまったく同じというわけではなくて、外壁と軒裏は防火構造でいいことになっています。
関連記事:準防火地域で木造3階建ての家を建てることはできる?
投稿者プロフィール
- 一級建築士受験資格保有。建築家が設計した住宅、築40年以上のヴィンテージマンション、ハウスメーカーの住宅などなど、住宅全般をこよなく愛しています。特に狭小住宅好き。
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