売渡承諾書には法的な効力はあるんでしょうか?
売渡承諾書には法的な拘束力や効力ってあるんでしょうか?
売渡承諾書を作成してしまったら、「必ず」家を売らなければいけないんでしょうか?
家を売りにだすと、家を買いたいという買主から「買付証明書(購入申込書)」が提出されます。
それに対する返事が「売渡承諾書」です。
「買いたい」という書類と、「売ります」という書類が揃うので、それで不動産売買が成立するのではないかとも思えます。
スーパーで野菜を買うときには、「このトマトください。」「はい、150円になります。」で売買契約が成立してしまいます。
はたして、不動産売買の時はどうなんでしょうか?
売渡承諾書に法的な拘束力や効力は「ありません」
結論から言えば、売渡承諾書には法的な拘束力や効力は「ありません」。
売渡承諾書を作成したからといって、必ず家を売らなければいけないというわけではないんです。
売らなくてもOKです。
このことは、公益財団法人である不動産流通推進センターのサイトでも明記されています。
売渡承諾書や買付証明書の交付によって売買契約が成立したか否かについて裁判で争われる例があるが、裁判所はその書面の交換が行われたとしても、いまだ売買は成立しないと判断する傾向にある。その理由は、売渡承諾書は当該物件を売ってもよいという意思を表明した書面にすぎず、買付証明書も購入の希望を表明したものにすぎず、当事者の意思として売買の合意が確定的に認められるとはいえないのであり、そのことは不動産の取引業界でも知られていることなのである。
売渡承諾書と買付証明書が揃っていても、裁判所では売買が成立しないと判断する傾向にあるということが書かれています。
なぜ売渡承諾書が求められることがあるのか?
法的な効力がないのであれば、なぜ、売渡承諾書が求められることがあるんでしょうか?
「法的な効力がないのであれば、無くてもいいんじゃない?」って思いますよね。
なぜなんでしょうか?
買主が金融機関から融資を受けるために売渡承諾書が必要?
金融機関が、売渡承諾書を要求する場合があります。
家を買うという人のほとんどは住宅ローンを組みます。
金融機関に行って、「家を買いたいので融資してください。」と言うわけです。
金融機関は住宅ローンを融資するときに、その人がどんな立地のどんな家を買おうとしているのかを入念にチェックします。
抵当権をいれるためです。
抵当権というのは、住宅ローンを借りている人が、仮に返済ができなくなったときに、強制的にその土地と家を売却してお金を回収することができる権利です。
土地と家の価値が融資額に見合わない場合は、抵当権を行使しても銀行が損をする可能性もでてくるので、審査は入念におこなわれます。
入念に審査をおこなうのに、「他の人に先にあの家を買われてしまいました。」とか言われたら金融機関としては困るわけです。
なので、金融機関としては、審査をおこなう前提として売渡承諾書を求めることがあります。
複数人から買付証明書をもらってるときに必要?
立地のいい家や人気のマンションの場合、同時に複数人から買付証明書をもらうこともあります。
そんな時、売渡承諾書は「交渉権」のような働きをします。
複数人の中から、一番いい条件で家を買ってくれそうな人に対して、売渡承諾書を提出します。
そうすることで、その人は「交渉権が得られた。」ということを理解しやすくなります。
あくまでも「交渉権」ということがポイントです。
売渡承諾書には法的な拘束力はありません。
売渡承諾書には家の売買価格なども記載するのですが、必ずしもその価格で売らなければいけないということはありません。
記載した売買価格よりも高く売っても問題はないわけです。
反対に、安く売っても問題はありません。
不動産売買契約書の締結前なら「やっぱり売らない」というのも有り
もっと言えば、売渡承諾書を提出したからといって、必ず家を売らなければいけないということもありません。
「やっぱり売らない」というのも法律的には有りなんです。
そういった意味で、売渡承諾書というのは「交渉権」みたいなものだと思っておくのがいいかもしれません。
ただし、不動産売買契約を締結するまでです。
不動産売買契約を締結した後に「やっぱり売らない」というのは難しくなります。
できないことはないのですが、不動産売買契約時に受け取った手付金を倍額で買主に支払わなければなりません。
手付金が100万円なら200万円、200万円なら400万円を違約金として買主に支払う必要があるということですね。
ただし、不動産会社からの信頼は無くすかもしれません
売渡承諾書を提出したからといって、不動産売買契約前なら「やっぱり家を売らない」という選択はできます。
でも、仲介をしてくれている不動産会社からの信頼は無くしてしまうかもしれません。
不動産会社の収入源は仲介手数料です。
売買金額の3%+6万円が不動産会社の利益になります。
仲介手数料は売買が成立したときにはじめて得ることができます。
言ってみれば成果報酬です。
もし、仲介している売主が不動産売買契約前に「やっぱり家を売らない」と言いだしたらどうなるでしょうか?
それまでの労力は水の泡になります。
まとめ
というわけで、売渡承諾書に法的な拘束力や効力はあるのかというお話をしました。
売渡承諾書には法的な効力がありません。
あくまでも「交渉権」と思っておくのがいいと思います。
ただし、法的な効力がないからといって無責任に「やっぱり売らない」というのは不動産会社からの信頼を失ってしまいかねません。
売渡承諾書を提出するときは、少なくともそのときは本気でその人に売るというつもりで作成するようにしたほうがいいかもしれません。
ちなみに、買付証明書も売渡承諾書と同様に法的な効力はありません。
「買付証明書を提出してきたんだから、やっぱり買わないというのはナシだよ。」とは言えないわけですね。
投稿者プロフィール
- 一級建築士受験資格保有。建築家が設計した住宅、築40年以上のヴィンテージマンション、ハウスメーカーの住宅などなど、住宅全般をこよなく愛しています。特に狭小住宅好き。
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