借地権の上に建っている家は売却できるんでしょうか?

借地権の上に建っている家・マンションって売却することができるんでしょうか?

 

「そもそも、借地権ってなんなのかがいまいちよく分からない。」

「地主さんに家を売却したいということを言わなけれないけないのかな?」

「借地権の上に建っている家っていくらぐらいで売れるんだろう?」

 

そう思うのならぜひ最後まで読んでみてください。

借地権とは?

結論から言えば、借地権の上に建っている家は売却することができます。

 

でも、その前に、「借地権」というものはどういうものかをお話したいと思います。

 

第三者の土地を借りてその上に自己所有の建物を建てられる権利

借地権というのは、簡単に言えば、「第三者の土地を借りてその上に自己所有の建物を建てられる権利」のことです。

 

借地権は大正10年の1921年に定められた借地法という法律によって生まれました。

大正10年というのは日本の人口が急激に増えていた時代です。

 

江戸時代の人口が3000万人強だったのが、大正10年には6000万人弱と急激に増えていました。

当然のことながらより多くの住宅が必要になります。

 

でも、多くの人は家を建てるための土地を買うことができませんでした。

 

そこで始まったのが借地です。

地主から土地を借りて、その上に自己所有の家を建てて住み始めました。

 

ただ、問題もありました。

地主の都合で家を追い出されてしまうということがあったんです。

 

地主の都合で簡単に家を追い出されては借地人はたまったものではありません。

そこで、借地人を保護するために作られたのが借地権です。

 

所有権=借地権+底地権

借地権というのは所有権とはどう違うんでしょうか?

 

実は、借地権と所有権というのは別々のものではないんです。

地主が所有権を持っていて、借地人が借地権を持つと考えるかもしれません。

 

でも、違うんです。

 

地主が借地人に借地権を与えると、地主は完全なる所有権は失います。

そして、底地権というものが残ります。

 

簡単に言うと、以下のような式になります。

  • 所有権=借地権+底地権

 

借地権と底地権を合わせると土地の所有権になるんです。

 

借地人が地主から底地権を買い取れば、その土地を所有することができます。

その逆もまたしかりです。

 

借地権は土地を借りることができる権利であって、借地権そのものには価値がないと考えるかもしれません。

でも、実際のところは借地権そのものに価値があります。

 

地域によってその割合は変わってきますが、借地権が6割で底地権が4割という地域が多いです。

 

都心ほど借地権の割合が高くなります。

東京都千代田区一番町では借地権の割合は80%です。

 

土地の値段が1億円だとすると、借地権には8000万円分の価値があるということになります。

底地権は2000万円です。

 

借地権の割合を詳しく知りたいという人は国税庁の土地の路線価(外部リンク)を確認してみてください。

路線価の数字の最後にアルファベットが記載されています。

借地権割合を表した数字です。

 

例えば、「2,840B」であれば、1平米あたり284万円で借地権割合は80%ということを表しています。

 

毎月地代を地主に支払います

借地人は、地主に対して毎月地代を支払う必要があります。

地代は固定資産税の約3〜5倍ほどと言われています。

 

その代り、土地に対しての固定資産税は支払う必要はありません。

固定資産税は地主が地代の中から支払うことになります。

 

ただし、借地の上に建っている建物の固定資産税は支払う必要があります。

 

借地権は大きく3つの種類に分けられます

“借地権”とひとくくりでお話してきましたが、借地権は大きく3つの種類に分けることができます。

 

  • 旧法借地権
  • 普通借地権
  • 定期借地権

 

旧法借地権(1921年〜1992年)

まず最初は、旧法借地権です。

 

さきほどもお話しましたが、大正10年の1921年に借地法が作られました。

そのときの借地権のことを旧法借地権と言います。

 

借地人を保護することを強く意識した借地権になります。

地主よりも借地人にとって有利な権利になっています。

 

というのも、正当な理由がなければ、借地人は半永久的にその土地に住み続けることができるからです。

地主の都合で借地人を追い出すということはできません。

 

旧法借地権は20年や30年ごとに更新されるのですが、借地人が更新したいと言えば、地主はそれを拒否することができません。

 

自分の土地なのに、一生その土地を利用することはできないということが起こり得るわけです。

 

旧法借地権は土地の上にどんな建物が建っているかによって更新期間が変わってきます。

 

木造住宅であれば20年ごとの更新になります。

木造住宅のことを「非堅固建物」と呼びます。

 

土地の上に建っているのが鉄筋コンクリートやレンガ造であれば、借地権の更新期間は30年になります。

鉄筋コンクリートやレンガ造のことを「堅固建物」と言います。

 

普通借地権(1992年〜)

旧法借地権が見直されて作られたのが平成4年の1992年に作られた借地借家法です。

 

旧法借地権は借地人が望めば半永久的に更新することができる権利でしたが、借地借家法では2つの借地権が作られました。

 

普通借地権と定期借地権の2つです。

 

普通借地権については、旧法借地権と似ていますが更新期間が短くなりました。

旧法借地権では木造であれば20年ごと、鉄筋コンクリート造であれば30年ごとの更新でした。

 

普通借地権では、最初の更新は20年、2回目以降の更新は10年ごとと決められました。

木造、鉄筋コンクリートなどの区別もなくなりました。

旧法借地権に比べると更新の機会が増えることになります。

 

借地権を更新するときには更新料を地主に支払うことになります。

旧法借地権よりも地主に少しだけ有利になるようになりました。

 

ちなみに、借地権の更新料は、借地権評価額の約5%〜10%と言われています。

 

さきほどの東京都千代田区一番町の話で言えば、借地権評価額は8000万円なので400万円〜800万円の更新料がかかるということですね。

さすがに都心は高くなりますね。

 

定期借地権(1992年〜)

借地借家法では定期借地権というものも作られました。

更新ができない借地権です。

 

例えば、50年の定期借地権だとすると、50年後には建物を取壊して更地にして地主に土地を返すことになります。

 

定期借地権が使われている代表的な例は、広尾ガーデンフォレストです。

広尾駅から徒歩7分のところに立地する高級マンションですね。

50年の定期借地権が利用されています。

 

2008年に竣工しているので、2018年現在では10年間経ったことになります。

残りは40年です。

 

ちなみに、定期借地権が利用されている広尾ガーデンフォレストは中古も流通しています。

借地権の上に建つ家やマンションでも問題なく売却することができる証拠です。

 

ただ、今はまだ40年間の残りがあるのでいいのですが、残り5年とかになったらどうなるんでしょうかね?

今現在は不動産バブルを迎えているということもあって、新築時より価格が上がっているという現象がおきています。

 

旧法借地権や普通借地権の場合には、建物が建っているうちは手元に借地権の価値が残ります。

でも、定期借地権の場合には借地権の価値も失うことになります。

 

広尾ガーデンフォレストの建つあたりは借地権割合が70%です。

その借地権も40年後には失うことになります。

 

そう考えると定期借地権というのは地主に有利に働く権利とも言えるかもしれません。

 

借地権はさらに2つの種類に分かれます

借地権はさらに2つの種類に分かれます。

 

  • 土地賃借権
  • 地上権

 

土地賃借権

借地権と言えば、そのほとんどが土地借地権のことです。

 

第三者に売る場合には地主の許可が必要です

土地賃借権の場合、借地権付きの建物として家を売却したいと思った場合、地主の許可が必要になってきます。

 

あなた:「あの〜、お借りしている土地なのですが、上に建っている建物とセットで第三者に売却したいのですがいいでしょうか?」

地主:「いいですよ。」

 

というやり取りがなければ家を売却することができません。

土地を借りているわけなので当たり前といえば当たり前に感じるかもしれませんが、のちほどお話する地上権の場合には、その許可すら必要がなくなります。

 

旧法借地権(土地賃借権)、普通借地権(土地賃借権)、定期借地権(土地賃借権)の場合には、家を売却するには地主の許可が必要になります。

 

名義書替料が必要になります

地主からの許可が必要なだけではなく、名義書替料も必要になってきます。

借地権の名義を第三者に移すためにお金がかかるということですね。

 

ちなみに、借地権評価額の約10%ほどの名義書替料がかかります。

 

借地権の評価額が3000万円だとすると、300万円の名義書替料が必要だということです。

 

地主に拒否されても裁判所に許可をもらえば売れます

地主によっては売却を拒否するかもしれません。

そうなると、家を売却することは不可能なのでしょうか?

 

そんなことはありません。

地主に拒否されても、裁判所に許可をもらえば家を売ることができます。

 

裁判所に許可してもらうことを「借地非訟(しゃくちひしょう)」と言います。

 

ただ、これをやってしまうとあなたの家を買いたいという人が少なくなるかもしれません。

地主とのトラブルを抱えた人から家を買いたいとは思いませんよね?

 

なので、なるべく借地非訟をするのではなくて、地主にしっかりと承諾してもらうということが大事になってきます。

 

地上権

借地権には地上権というものがあります。

旧法借地権(地上権)、普通借地権(地上権)、定期借地権(地上権)といった具合です。

 

地上権というものは、借地人に対してとても有利な権利です。

旧借地権(地上権)であれば、かなり所有権に近い権利を持つことになります。

 

地上権なら地主の許可なく家を売却できます

地上権であれば、地主の許可なく家を売却することができます。

 

家を増改築するときにも、土地賃借権の場合には地主の許可が必要なのですが、地上権の場合にはそいういった場合にも許可が不要です。

 

地代と更新料を支払う以外は、まるで自分がその土地を所有しているかのように振る舞うことができます。

 

名義書替料がいりません

土地賃借権の場合には必要だった名義書替料というものも不要です。

 

所有権と比べれば安くなることは覚悟すること

借地権の上に建つ家を売却する場合には、所有権をもつ土地の上に建つ家を売却するときよりも安くなることは覚悟しておいてください。

 

さきほど、借地権にも価値があるというお話をしました。

借地権割合が60%の土地であれば、5000万円の土地であれば3000万円分の価値があるということです。

借地権の価値は半減します

ただ、第三者に借地権付きの家を売る場合には、借地権の価値は半減すると思っておいたほうがいいです。

 

借地権の価値を半減させずに売却することができるのは、地主に借地権付きの家を売却するときだけです。

地主は借地権を得れば、底地権と合わせて所有権を得ることになります。

所有権が得られるのであれば、本来の価値で買ってもいいですよね。

 

でも、第三者からすれば、借地権は借地権です。

地上権であればまだいいのですが、土地賃借権の場合は家を増改築するのにも地主の許可が必要になるし、地代と更新料も支払う必要があります。

 

割安感がなければなかなか買おうとは思わないのが現実です。

 

借地権に3000万円分の価値があるとしても、半額の1500万円+建物の価格ぐらいの値段でなければ売却することは難しいかもしれません。

 

借地権付きの家はローンがつきにくい

借地権付きの家にはローンがつきにくいという問題もあります。

 

あなたの家が気に入って買いたいという人が現れたとしても、銀行などの金融機関が借地権であることを気にしてローンを許可しない可能性だってあります。

 

そして、土地賃借権の場合に多いのですが、借地権がきちんと登記されていないことがあります。

 

銀行でローンを組むときには、銀行は土地と建物に対して抵当権をいれてきます。

抵当権をいれるためには、借地権がきちんと登記されている必要があります。

 

借地権を登記するには地主の許可が必要です。

この登記を地主が拒否する可能性だってあります。

 

まとめ

というわけで、借地権の上に建っている家・マンションは売却できるのかということについてお話しました。

 

家の売却に地主からの許可が必要かもしれません

借地権付きの家でも問題なく売却することができますが、家を売却するのに地主の許可が必要な可能性が高いです。

 

借地権の種類が土地賃借権であれば、地主の許可が必要になってきます。

また、名義書替料としてお金も必要になってきます。

 

借地権の種類が地上権の場合には、地主の許可は不要です。

 

さきほどもお話した、広尾ガーデンフォレストは地上権になっています。

なので、地主の許可なくマンションの売買が可能になっているんですね。

 

借地権の売値は安くなります

地主に借地権付きの家を売却するのでなければ、借地権は安く売ることになります。

 

というもも、借地権は底地権と合わせてやっと一人前になるからです。

借地権だけだと半人前です。

 

土地を売るにも地主の許可が必要になってきたりしますし、家の増改築にも許可が必要になってきます。

地上権の場合はそんな許可も必要ありませんが、地代と更新料は必要になってきます。

 

所有権と比べて面倒事が増えるのは確実です。

 

そんなこともあって、借地権の価値を満額で売るのは難しいと思っておいたほうが無難だと思います。

 

投稿者プロフィール

山河直純
山河直純住宅不動産研究家
一級建築士受験資格保有。建築家が設計した住宅、築40年以上のヴィンテージマンション、ハウスメーカーの住宅などなど、住宅全般をこよなく愛しています。特に狭小住宅好き。

家を高く売りたいなら知っておきたいこと

もし、あなたが家を高く売りたいと思っているのであれば、
これだけは知っておいたほうがいいかもしれません。