火災保険料が安くなる「T構造」って一体何なんでしょうか?
家のトータルでのランニングコストを考えたときに気になってくるのが火災保険料です。
火災保険料というのは構造によってその値段が変わってきます。
木造住宅の場合は「H構造」か「T構造」のどちらかに分類されます。
「T構造」のほうが保険料が安くなるのですが、一体、「T構造」ってどんなものなんでしょうか?
T構造とは「耐火構造」のことです
T構造というのは「耐火構造」のことです。
TAIKA構造だからT構造です。
こういう場合、だいたいは英語の頭文字を使いますよね。
耐火の場合には英語で「Fireproof(ファイヤープルーフ)」です。
なので、英語の頭文字をとってF構造としてもいいと思うのですが、火災保険の構造分類ではローマ字読みの頭文字が使われます。
ちなみに、H構造は「非耐火構造」のことです。
こちらもローマ字読みの頭文字です。
火事になっても45分は燃えないのが耐火構造です
耐火構造とはなにかというと、火事になったとしても最低でも45分は燃えない構造のことを言います。
普通の木造住宅の場合には、45分どころか5分も持たないかもしれません。
もし、カーテンに火がついたら、カーテンに接している壁はすぐに燃え始めてしまうかもしれません。
一方、耐火構造の場合には、カーテンに火がついたとしても、カーテンに接している壁は45分は燃えません。
その前にカーテンが燃え尽きてしまいますよね。
なので、普通の非耐火構造の木造住宅よりも、耐火構造の木造住宅というのは火事になりにくいんです。
なので、火災保険料が安くなるんですね。
ちなみに、耐火構造については、建築基準法によって定められています。
45分は燃えずにいられる構造のことを「準耐火建築物」、1時間以上燃えずにいられる構造のことを「耐火建築物」と呼びます。
木造2階建てで耐火構造にするのは大げさ?
耐火構造にするには、普通の木材は使えません。
天然の無垢材は使うことができないということです。
無垢材を使った家具を置くというのは問題ないのですが、家の構造材や、壁や天井に無垢材を使うことはできません。
耐火材の上に無垢材を貼るということはできますけどね。
例えば、床を無垢材を使ったフローリングにしたい場合には、まずは耐火材を床に貼ります。
そして、その上に無垢材のフローリングを貼ります。
ちなみに、建築基準法では、防火地域や準防火地域において、3階建て以上の建物を建てるのであれば、耐火性のある構造が求められます。
耐火建築物や準耐火建築物として建物を建てなければいけないということですね。
住宅であってもそうです。
3階建て以上の場合には、火事になったときに逃げるのに時間がかかるので、簡単に燃え崩れられてしまっては困るからです。
その点、2階建てまでであれば、準防火地域では耐火構造にしなくてもいいことになっています。
防火地域の場合は、2階建てであっても準耐火建築物にしなければいけないですけどね。
そう考えると、防火地域でもないのに、木造2階建てで耐火構造にするのはすこし大げさなんじゃないかとも言えます。
耐火構造じゃなくてもT構造扱いされる「省令準耐火」とは?
火災保険の場合、T構造として扱われる構造の中に「省令準耐火」というものがあります。
「準耐火建築物と同じようなものなのでは?」と思うかもしれませんが、実は結構違います。
省令準耐火というのは、実はどちらかというと「耐火構造」よりも「防火構造」に近いものがあります。
防火構造というのは、家の外壁と軒裏にだけ防火材を使ったものです。
もっと言えば、お隣が火事になっても巻き添えにならないための構造です。
お隣の火にさらされても30分は燃えずにいられる必要があります。
省令準耐火というのは、防火構造にプラスして、各部屋ごとにも防火性を持たせたものです。
さきほどの例で言えば、カーテンに火がついたとしても、20〜30分は壁が燃えないで済むようにするということですね。
省令準耐火というのは、建築基準法でいう耐火構造の基準は満たすことができません。
でも、火災保険の構造分類上では耐火構造であるT構造に分類されるんですね。
なので、木造2階建て住宅で火災保険料を安くしたいのであれば、省令準耐火を満たすようにするのが最もハードルが低いです。
ツーバイフォーなら省令準耐火にしやすいです
省令準耐火としての基準は、在来軸組工法でも満たすことは可能ですが、ツーバイフォー工法のほうが満たしやすいです。
というよりも、省令準耐火というのは日本にツーバイフォーを普及させるために作られたと言っても過言ではありません。
ツーバイフォーというのは、面を組み合わせて家を建てる工法です。
ダンボールみたいに家を組み立てるといってもいいかもしれません。
なので、ツーバイフォーで家を建てると、すべてが面になります。
その面に防火材が使われているのであれば、自然と省令準耐火としての基準を満たしてしまいます。
一方、在来軸組工法の場合には、面ではなく線で家を建てていきます。
柱や梁などですね。
そして、必要に応じて板を貼って面にしていきます。
なので、柱や梁がむき出しになっている部分が結構あります。
省令準耐火としての基準を満たすには、そういった部分も防火材で覆う必要があります。
まとめ
というわけで、火災保険料が安くなる「T構造」とは何かについてお話しました。
T構造というのは耐火構造のことです。
そして、H構造というのは非耐火構造のことです。
耐火構造の場合、火にさらされても45分は燃えないように作られています。
火事が起きにくくなります。
なので、T構造だと火災保険料が安くなるんですね。
ただ、木造2階建てで耐火建築物や準耐火建築物の基準を満たそうとすると、少し大げさになってしまいます。
そんなときには、省令準耐火としての基準を満たすのが最もハードルが低いです。
省令準耐火というのは、防火構造にプラスして、各部屋ごとにも防火性をもたせたものです。
準耐火建築物としての基準は満たせませんが、火災保険ではT構造として認めてもらえます。
また、省令準耐火としての基準を満たしたいのであれば、在来軸組工法よりもツーバイフォー工法のほうが適しています。
関連記事:「省令準耐火」と「準耐火」ってどんな違いがあるんでしょうか?
関連記事:火事でお隣の家まで延焼させてしまった場合、賠償はどうなるのか?
投稿者プロフィール
- 一級建築士受験資格保有。建築家が設計した住宅、築40年以上のヴィンテージマンション、ハウスメーカーの住宅などなど、住宅全般をこよなく愛しています。特に狭小住宅好き。
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