農業をしないのに農地を相続した場合にはどうするのがいい?
親は農家で、自分はサラリーマン。
そんな場合には、自分は農業をしないにも関わらず、農地を相続しなければいけない可能性があります。
そういった場合、相続した農地はどうするのがいいんでしょうか?
売却するか?相続放棄するか?農家になるか?放置するか?
選択肢は4つです。
「売却する」
「相続放棄する」
「農家になる」
「放置する」
です。
可能であれば売却するのがいいのではないかなと思います。
相続放棄するという選択肢に魅力を感じる人もいるかもしれませんが、相続放棄する場合には、農地以外の遺産も放棄する必要があります。
現金だけ相続して、農地だけ相続放棄ということはできないんですね。
また、相続放棄すればそれで終わりというわけでもなくて、相続権は次の順位の人に移ります。
例えば、あなたが相続放棄すると、叔父さんにその相続権が移ったりするんです。
叔父さんはどう思うでしょうか?
「俺も農地を相続したくないよ、面倒なことをしてくれたなあ」と思うかもしれません。
そして、叔父さんも相続放棄する可能性が高いです。
この相続権の移転は相続人がいなくなるまで続きます。
相続人がいなくなっても、それで終わりというわけではなくて、裁判所で相続財産管理人を選任しなければなりません。
相続放棄した財産を管理する人が必要だからですね。
そのための費用として数十万円かかります。
それだったら農地を放置して、固定資産税を払っていたほうが楽だし安いという可能性もでてきます。
相続をキッカケに農家になるという選択肢もありますが、そういう選択をする人は稀なのではないでしょうか?
農地によって「売りやすさ」というのはかなり違います
売れるのであれば、農地は売ったほうがいいと思います。
農業をしないのであればなおさらです。
でも、「農地を売るのって難しいって聞いたんだけど?」って思うかもしれません。
確かに、農地というのは農地法という法律で守られているので、一般の宅地のように簡単には売ることができません。
でも、農地だからといってすべての農地が売りにくいというわけではないんですね。
農地にも「売りやすさ」の段階というものがあります。
決め手は「宅地」として使える立地にあるかということ
どんな農地であれば売りやすいのかというと、宅地として使われても違和感がない場所に立地している農地です。
極端なことを言えば、住宅街の中にポツンと立地している農地の場合、むしろ、そこに農地があるほうが不自然ですよね。
むしろ、宅地であるべきです。
そういった農地の場合には、かなり売りやすい農地だと言えます。
具体的に言うと、「市街化区域」の中にある農地の場合には問題なく売ることができると思います。
市街化区域というのは、商業施設とか住宅地として使っていきましょうと都市計画法で決められている区域です。
農地を宅地として使うには、基本的には農業委員会や都道府県知事の許可が必要です。
農地を売るのは難しいと言われている理由はそこにあるのですが、実は、農地が市街化区域にある場合には許可が不要になります。
そもそも、農地として使うべきではない区域にある農地なので、農地であることを維持する必要はないという考え方なんですね。
市街化区域内の農地は、普通の宅地と同じようなものとして売ることができるため、高く売ることができるというのも大きなメリットです。
市街化調整区域でも「駅近」なら宅地として使える可能性があります
市街化区域に対して、農地や森林として自然環境の良い区域として使っていこうというのが市街化調整区域です。
多くの農地は市街化調整区域の中にあります。
市街化調整区域の中の農地を売るのには、基本的には農業委員会や都道府県知事の許可が必要になります。
そして、この許可が必要なのは農地を購入する側です。
「ここの農地を購入して宅地にして家を建てたいんだけれども、購入するには許可が必要になるらしい・・」ということになってしまうんですね。
農地の売買は難しいと言われる理由です。
でも、市街化調整区域の農地であっても、例外的に宅地として売りやすいものがあります。
それは、「駅近」などのアクセスの良い立地の農地の場合です。
駅のまわりには商店街や住宅街ができやすいですよね。
それは市街化調整区域であっても同じです。
市街化調整区域であっても、駅とか高速道路のインターチェンジとかバス停とか役所とか、アクセスの拠点になる場所には建物が密集していることがあります。
そういった場所に立地する農地であれば、市街化調整区域内であっても宅地として使うことを許可される可能性がとても高くなるんですね。
そういった農地のことを「第3種農地」と呼んだりします。
アクセスの拠点から300m以内の農地ですね。
300mというのは徒歩4分ぐらいです。
それぐらいの距離にある農地であれば宅地としての使用が認められやすいということです。
ちなみに「第2種農地」というものもあります。
第2種農地はアクセスの拠点から500m以内の農地です。
アクセスの拠点から300mぐらいの土地が一杯になってしまった場合、第2種農地であっても、宅地として認められることがあります。
最後の手段は「農家」に農地を売るしかありません
第3種農地でもなく、第2種農地でもない場合、農地を宅地として一般人に売ることはとても難しくなります。
プロに売るしかなくなります。
プロというのは農家ですね。
農地を農業のプロである農家に売るということです。
ある意味では自然な流れと言えなくもありませんが、農家に農地を売る場合、売る相手というのがかなり狭まります。
相続した農地を、お隣の農家が購入してくれるのであれば楽ですが、購入してくれるとも限りません。
今の時代、農家の高齢化も進んでいますし、後継者不足でもあります。
「購入したいんだけれども人手不足でね」と言われる可能性はとても高いです。
とはいえ、どこかで農地を探している人や組織がいないとも限りません。
そういった情報を得るためにも、農地を農地として農家に売りたいという場合には、農業委員会に相談に行くのがいいと思います。
農地を農家に売る場合にはどちらにしても農業委員会の許可が必要になります。
まとめ
というわけで、農業をしないのに農地を相続した場合にはどうするのがいいのかというお話をしました。
選択肢は4つあります。
「売却する」
「相続放棄する」
「農家になる」
「放置する」
です。
農業をしないのであれば、売却するという選択肢が最善だと思います。
ただ、農地というのは一般の宅地のように簡単に売買することはできません。
農地の立地によって「売りやすさ」というものが変わってきます。
1番売りやすいのは、「市街化区域」にある農地です。
農地の売買には農業委員会や都道府県知事の許可が必要になったりするのですが、市街化区域の場合には許可不要です。
宅地を売るのと同じような感覚で売却することができます。
次に売りやすいのは「第3種農地」の場合です。
市街化調整区域にある農地でも、駅やバス停や高速道路のインターチェンジや役所などのアクセスの拠点になりうる場所から300m以内に立地している農地を第3種農地と呼びます。
第3種農地の場合、売買には許可が必要になりますが、許可される可能性というのがとても高くなります。
100%ではありませんが、第3種農地の場合には基本許可されると考えていいかもしれません。
第2種農地は第3種農地ほどではありませんが許可される可能性があります。
それ以外の農地になると、一般人に宅地として売るのは困難になります。
同業者である農家に売ることになるので、まずは、農業委員会に相談に行くのがいいと思います。
関連記事:市街化調整区域の家や土地を購入することのデメリットとは?
関連記事:農地を売却するのは難しい?
関連記事:生産緑地2022年問題、「延長」するべきか「売却」するべきか?
投稿者プロフィール
- 一級建築士受験資格保有。建築家が設計した住宅、築40年以上のヴィンテージマンション、ハウスメーカーの住宅などなど、住宅全般をこよなく愛しています。特に狭小住宅好き。
最新の投稿
- 2019.12.09税金・相続・法律「相続登記」と「所有権移転登記」の違いは何なんでしょうか?
- 2019.12.06住宅性能・住宅診断家は住まないと劣化するというのは本当なんでしょうか?
- 2019.12.06登記「表題登記(表示登記)」と「権利登記」はどう違う?
- 2019.12.06税金・相続・法律相続した不動産が未登記だった場合にはどうするのがいいんでしょうか?
家を高く売りたいなら知っておきたいこと
これだけは知っておいたほうがいいかもしれません。