任意売却をするべきはどんな人?
任意売却をするべきはどんな人なんでしょうか?
「収入が少なくなってしまって住宅ローンを支払うのが困難になってきた。家を売るにしてもオーバーローンになってしまって売るに売れない。どうしよう?」
「住宅ローンを滞納してしまって今後どうなってしまうのかとても不安。このままだと家を差し押さえられて競売にかけられてしまうんだろうか?」
そう思うならぜひ最後まで読んでみてください。
任意売却とは?
任意売却って一体どんなものなんでしょうか?
家が強制的に競売にかけられるのを避けられる
任意売却をすれば、家が強制的に競売にかけられてしまうのを避けることができます。
住宅ローンの支払いを数ヶ月のあいだ滞納すると、金融機関はあなたの家を差し押さえて競売にかけようとします。競売にかけることによって家を現金に変えて債権を回収しようとします。
のちほど詳しくお話しますが、家を競売にかけるのはあなた(債務者)にとっても金融機関(債権者)にとってもデメリットがあります。
債権者の任意を得て一般市場で家を売却します
そこで登場するのが任意売却です。
任意売却の「任意」とはなにを意味するのかというと、家をどうやって売却するのかを任せるということを意味します。競売以外の方法で家を売ってもいいよということです。
債権者からすれば債権が回収できればいいんです。そして、より多くの債権が回収できるほうがいいわけです。
任意売却では”一般市場”で家を売却します。競売で家を売るよりも一般市場で家を売るほうが売却価格が高くなる傾向があります。必ずしも競売よりも高くなるとは言い切れないのですが任意売却のほうが高く売れることのほうが多いです。
債権者にとってもそれは都合がいいことなので、任意売却は認められることが多いです。
住宅金融支援機構も任意売却をススメています
フラット35の住宅金融支援機構も、住宅ローンが支払えなくなった際には任意売却をすることをススメています。
以下、引用します。
- 通常の不動産取引として売買されるため、一般的に競売より高値で売却できることが期待され、お客さまの負債の縮減につながります。
- 任意売却パンフレットに定める手続にご協力いただける場合、お客さまの状況により売却代金から不動産仲介手数料、抹消登記費用等を控除できる場合があり、また、お客さまの残債務の状況等により延滞損害金減額のご相談に応じられる場合があります。
- 裁判所による手続である競売と比べると、ご自宅の引渡時期についての調整がしやすく、ご自宅退去後の生活設計が立てやすくなります。
競売とはなにが違う?
フラット35の住宅金融支援機構でも競売よりも任意売却がオススメされるぐらいです。
競売よりも任意売却のほうがメリットがありそうなのはわかると思いますが、競売と任意売却は何が違うのでしょうか?
競売で売られるよりも高く売れる(相場の8〜9割)
もっとも大きな違いは売却価格です。
競売では相場の6割ほどの価格から入札が開始されます。もし、入札者がひとりだった場合、相場の6割ほどの価格で売られることになってしまうこともあるということです。
相場が3000万円だとしたら1800万円で売られることになります。
これはあなたにとっても債権者にとっても良いことではないですよね。1200万円分損をすることになってしまいます。
一方、任意売却では一般市場で家を売却するので競売よりは高く売れることが多いです。任意売却の場合は売却期間にあまり時間をかけられないため、相場並みに売却することは難しいですが相場の8〜9割で売ることができます。
相場が3000万円だとしたら2700万円で売れる可能性があるということです。競売と比べて900万円も違うことになります。
もちろん、これは極端な例です。競売でも7割ほどで売れることもありますし、任意売却でも7割ほどでしか売れない可能性だってあります。そうなると、どちらでも変わらないことになります。
ただ、任意売却のほうが高く売れる可能性は高いのは事実です。
引越しの費用を負担してもらえるかもしれません
競売にしろ任意売却にしろ、家が売却されたらあなたはどこかに引越しをしなければいけません。引越しをするのにだってお金はかかります。
任意売却の場合は、その引越し費用を債権者が負担してくれる可能性が高くなります。必ず負担してもらえるというわけではないのですが、その可能性は高くなります。
なぜかというと、任意売却のほうが家が高く売れる可能性が高いからです。
任意売却をしたって債権すべてを回収できる可能性は低いのですが、競売をするよりはより多くの債権を回収できる可能性があります。その差額の中からあなたの引越し費用を用意してもらえるかもしれません。
任意売却をするべき人
任意売却をするべき人はどんな人なんでしょうか?
住宅ローンがもうこれ以上支払えない人
住宅ローンがもうこれ以上支払えないというすべての人です。
選択肢は2つしかありません。家を競売にかけられるか任意売却するかの2択です。この記事を読んでいるのであれば任意売却の存在を知っているということでもあると思います。
任意売却をせずに家が競売にかけられるのを待つ必要はないのではないでしょうか。
任意売却をするタイミング
任意売却をするにはタイミングというものがあります。いつでも任意売却を始められるというわけではありません。
住宅ローンを一括返済してくださいという通知が届いたら
任意売却を始めることができるのは、住宅ローンを一括返済してくださいという通知が金融機関からきてからになります。
住宅ローンを一括返済してくださいという通知のことを”期限の利益の喪失”と言います。住宅ローンを分割して支払える権利のことを”期限の利益”と言うんですね。
住宅ローンの支払いを3〜6ヶ月ほど滞納するとこの通知が送られてきます。何ヶ月の滞納かは金融機関によって変わってきます。一般的には、銀行の場合は3ヶ月、フラット35の場合は6ヶ月になります。
競売開始決定通知が届いたとき
任意売却をするなら、「期限の利益の喪失」の通知がきたときから始めるのがベストなのですが、そのときに何も対応しなかったらどうなるかの流れをお話します。
住宅ローン一括返済の通知がきたということは、金融機関はあなたの家を売却してお金を回収しようとしているということです。そのための法的措置の準備が始められています。
債権の回収のもっともメジャーな方法が競売です。
金融機関は債権を回収するのは保証会社です。保証会社はサービサーと呼ばれる債権回収会社に債権の回収を依頼します。そうすると、サービサーは裁判所に競売の申立てをおこないます。
競売の申立てがおこなわれると、裁判所からあなたに「競売開始決定通知」が届きます。
「期限の利益の喪失」の通知が届いた後にもなにも対応せずにいると、「競売開始決定通知」を受け取ることになります。そのときになって始めてあなたの家が競売にかけられたことに気がつくことになります。
任意売却をする最後のタイミングがこのときです。競売で家の売却が決定するまでにまだ6ヶ月以上あります。場合によっては競売の申立てを取り下げてもらうこともできます。
「競売開始決定通知」が届くと、1〜2ヶ月以内に裁判所の執行人と評価人があなたの家を訪れます。競売にかける家がどういう状態なのかを確認しにきます。現状調査です。
競売にかけられている場合、訪問を拒否することはできません。鍵をかけて居留守を使ったとしても合法的に解錠してあなたの家の中にはいってきます。とても気分の良いものではないですが我慢するしかありません。
そして、家の訪問から2〜4ヶ月後に「期間入札通知」が届きます。そこには競売の入札期間や開札日が記載されています。開札日というのはあなたの家が誰に売却されるのが決まる日です。
「期間入札通知」が届いてから2〜3ヶ月後にはあなたの家は競売によって売却されてしまいます。
ここまでくると任意売却をするのは非常に難しいと思っておいたほうがいいです。任意売却を始めることはできますが、競売によってあなたの家が売却されてしまうまでに間に合わない可能性がとても高いです。
任意売却はどこに頼むべきか?
「競売よりも任意売却したほうが良さそう」
そう思ってもどこに任意売却を頼めばいいのか迷うはずです。一体どこに任意売却を頼むのがいいんでしょうか?
任意売却に専門資格はありません
任意売却をおこなうための専門資格というのはありません。
家の売却を仲介するので「宅地建物取引士」の資格は必要になるのですが、宅地建物取引士だからといって任意売却をおこなえるかというと話が変わってきます。
というのも任意売却には債務に関する法律的な問題がからんでくるからです。任意売却を認めてもらうために債権者との交渉も必要になってきます。
宅地建物取引士の資格を持っているというだけでは任意売却に対応することが難しいです。
任意売却に詳しい弁護士が関わっているか?
任意売却を手伝ってくれる業者を選ぶときは、任意売却に詳しい弁護士が関わっているのかどうかをしっかりとチェックすることをオススメします。
弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。弁護士にも得意なジャンルというものがあります。例えば、相続が得意とか、企業買収が得意とか、知的財産権が得意とかです。
企業買収が得意な弁護士が関わっているところよりも、任意売却が得意な弁護士が関わっているところのほうが安心して任意売却をお願いすることができるはずです。
任意売却のメリット
-
金融機関との交渉を代行してもらえる
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引越し代を用意してもらえるかも
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今の家に住み続けられるかも
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現金を用意する必要がありません
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プライバシーが守られやすい
金融機関との交渉を代行してもらえる
任意売却を手伝ってくれる業者は、債権者である金融機関との交渉も代行してもらえることがほとんどです。場合によってはあなたも同席しなければいけない可能性もありますが、その時でも交渉そのものは業者がおこなってくれます。
任意売却を認めてもらうこと、競売の取り下げは可能かなど、あなたに代わって金融機関と交渉してくれます。
引越し代を用意してもらえるかも
競売で家が売却された場合、次の住まいへの引越し費用はあなた自身で用意しなければいけません。
住宅ローンを返済できずに家が競売にかけられた状態で、引越し費用を用意することは簡単なことではありません。それでも、競売で家が売れてしまったらあなたは今の家から立ち退かなければいけません。居座ろうと思っても強制的に追い出されてしまいます。
任意売却であれば、その引越し費用を債権者である金融機関が肩代わりしてくれる可能性があります。
任意売却のほうが競売よりも家が高く売れる可能性が高いからです。その差額の中からあなたの引越し費用を負担してくれる可能性があるんです。
今の家に住み続けられるかも
今の家に住み続けることができるということをアピールしている任意売却業者もあります。最近増えているのではないでしょうか。
リースバックという仕組みが使われます。
不動産賃貸業者にあなたの家を買取ってもらい、賃貸としてあなたが入居するという仕組みです。たしかにリースバックを利用すれば今の家に住み続けるということが可能になります。引越しをする必要もなくなります。
でも、注意も必要です。
賃貸料は住宅ローンよりも高くなってしまう可能性があります。一般的に、同じ条件の物件であれば住宅ローンの返済額よりも賃貸料のほうが高くなります。でなければ賃貸というビジネスが成り立ちません。
安定した仕事をすぐに見つけられるのであればリースバックもいいかもしれませんが、そうでなければ家賃の安い小さな住まいを見つけたほうがいい可能性があります。
現金を用意する必要がありません
任意売却業者へ現金で報酬を支払う必要はありません。
今、手元に現金がなくても大丈夫です。家が売却されたお金は銀行へ回収され、その中から業者へ仲介手数料が支払われます。
さきほどもお話しましたが、引越し費用も家が売却されたお金の中から用意してもらえる可能性が高いです。
プライバシーが守られやすい
プライバシーが守られやすいのも任意売却のメリットのひとつです。
ただし、競売にかけられる前に任意売却を始めることができた場合はです。競売の申立てをされてしまうと、その1〜2ヶ月後に裁判所の執行人と評価人があなたの家の現状調査にやってきてしまいます。周辺の人達への調査もあるかもしれません。あなたの家が競売にかけられていることが知られてしまう可能性があります。
なので、プライバシーを守りたい場合には裁判所の執行人と評価人があなたの家に現状調査をしにくる前に任意売却を始める必要があります。競売の申立てを取り下げてもらう必要があります。
任意売却のデメリット
-
任意売却が失敗することもあります
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内覧対応をする必要があります
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競売に比べると引越し日がかなり早まります
任意売却が失敗することもあります
任意売却は競売を避けることができる素晴らしい方法のように言われます。
たしかにその通りなのですが任意売却が失敗に終わる可能性だってあります。というのも、家を売却しなければいけないことには変わりがないからです。必ず家は売らなければいけません。
家を上手に売却するというのは難しいです。特に家を高く売るというのは難しいです。売出価格を高く設定してしまった場合はなかなか売れないということもありえます。任意売却と競売が同時並行ですすめられていた場合、任意売却で家を売却する前に競売で家が売却されてしまうということもあります。
内覧対応をする必要があります
任意売却では一般市場で家を売却します。
つまりは、内覧希望者がいたらあなたが家の内覧対応をしなければいけないということです。住宅ローンが支払えなくなって大変な時期ですが、家を売却するために内覧対応はする必要があります。
家の中をきちんと掃除しておく必要もあります。
競売に比べると引越し日がかなり早まります
任意売却で家を売却すると、あなたが家を出なければならない時期がかなり早まります。
競売で家を売却する場合には、あなたの家が競売にかけられてから実際に売却されるまでに約6ヶ月以上かかります。裏を返せば競売であれば、あなたはあと6ヶ月はその家に住み続けることができるということです。
任意売却の場合は競売で家が売却されてしまう前に、家を売却しなければいけません。なかなか買主が見つからない可能性も考えると早ければ早いほどいいです。
任意売却を始めて1ヶ月後に家が売却できた場合、あなたはその1〜2ヶ月後には家を出ていかなければならなくなるかもしれません。競売に比べると引越し日はかなり早まります。
金融機関にとっても任意売却がのぞましい?
任意売却は債権を回収する側である金融機関にとってもメリットがあります。
金融機関が任意売却をすすめてくることも
最初のほうでもお話しましたが、フラット35の住宅金融支援機構も任意売却をすすめています。
住宅ローンを3ヶ月や6ヶ月滞納すると”期限の利益”が喪失されたという通知が届きます。住宅ローンを分割じゃなくて一括で返済してくださいという通知です。
その通知の中に、任意売却の案内も同封されていることがあります。
「一般的な流れだと、あなたの家は競売にかけられることになるんだけれども、任意売却という方法もあるので検討してみてください」
という感じです。
競売には手数料として100万ぐらいかかります
競売は裁判所がタダでおこなってくれるわけではありません。
あなたの家を競売にかけるのにもお金が必要になってくるんですね。だいたい100万円ほどのお金(予納金)が必要になってきます。この額はあなたがどれくらいの残債を抱えているかにによって変わります。残債が高いほどにより多くのお金が必要になります。
任意売却だってタダというわけではありません。金融機関からすると任意売却業者に仲介手数料は支払わなければいけません。でも、競売にかかる手数料よりも安くなることがあります。
例えば、あなたの家が2000万円で売却されたとすると仲介手数料は3%+6万円の66万円になります。
マンションの管理費・修繕積立金も滞納してるんだけど?
住宅ローンだけではなくて、マンションの管理費や修繕積立金も滞納している場合はどうなるんでしょうか?
任意売却されたお金でまかなわれます
任意売却されたお金の中からまかなわれるので安心してください。任意売却をした後に、マンションの管理組合から管理費と修繕積立金が請求され続けるということはありません。
あなたのマンションを購入した人が、滞納した管理費と修繕積立金を請求されるということもありません。
連帯保証人はどうなるのか?
住宅ローンを滞納すると気になってくるのが連帯保証人はどうなるのかという点です。
迷惑をかけることは避けられません
結論から言えば、連帯保証人に迷惑をかけることは避けられません。あなたが住宅ローンを1ヶ月滞納した時点で、連帯保証人には連絡がいっている可能性は高いです。
もしかしたら、すでに連帯保証人から「大丈夫?」とあなたに連絡がきているのではないでしょうか?
連帯保証人に迷惑をかけないためにも、競売よりも任意売却のほうがいいんです。
家が高く売れるということは、それだけ住宅ローンの残債を少なくすることができるということです。競売であれば残債が1200万円ほど残るところを、任意売却にすれば300万円ほどに少なくできる可能性だってあるんです。
300万円の残債であればあなた自身の力で返済できる可能性だって十分にあります。毎月5万円の返済を5年続ければ完済することができます。これが残債が1200万円となると話が変わってきます。
任意売却する前に自己破産をしてしまうのは?
住宅ローンが支払えなくなってくると自己破産をするという選択肢も考えるのではないでしょうか。
自己破産するにも50万円ほどの現金が必要です
実は、自己破産をするのにもお金が必要になるんです。家を所有している状態で自己破産をしようとするとそうなります。
残債が5000万円未満の場合、家を所有した状態で自己破産をしようとすると50万円ほどの予納金という手数料が必要になってきます。50万円の現金を用意するなんて難しいのではないでしょうか。
自己破産には「同時廃止」と「管財」という2つのパターンがあります。
家などの資産を所有していない場合は「同時廃止」と呼ばれる自己破産をすることになります。資産を所有している場合は「管財」と呼ばれる自己破産をすることになります。
あなたが家という資産を持っている場合、裁判所の管財人はその資産を適切に処分する必要がでてきます。50万円というのはその手数料みたいなものです。
あなた自身が任意売却で家を売却するのであれば、その手数料は不要になります。
まとめ
任意売却をするべきはこんな人です。
- 住宅ローンを支払うことができなくなったすべての人
住宅ローンを支払えなくなると、あなたの家は必ず競売にかけられることになります。仕方がないことと受け入れることもできますが、今は任意売却という方法も確立されています。
あなたとしても、競売に比べれば残債を少なくすることができます。債権者である金融機関としても、より多くの債権を回収することができます。
残債の額によっては自己破産をしないで済むことになります。
任意売却をするかどうかが、自己破産をしないで済むかどうかの分かれ道になるかもしれません。
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投稿者プロフィール
- 一級建築士受験資格保有。建築家が設計した住宅、築40年以上のヴィンテージマンション、ハウスメーカーの住宅などなど、住宅全般をこよなく愛しています。特に狭小住宅好き。
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家を高く売りたいなら知っておきたいこと
これだけは知っておいたほうがいいかもしれません。