住民負担なしでマンションを建て替えることは可能?

老朽化がすすんでいる日本のマンション。

築40年以上のマンションも全体の2割ほどを占めます。

 

でも、建て替えの話がでても、

なかなか実行されることが少ないのが現状です。

 

建て替えるとなると住民負担が発生するからです。

住民負担なしでマンションを建て替えることって可能なんでしょうか?

 

場合によっては可能です。

ハッキリ言うと、難しいと思います。

でも、不可能ではありません。

 

場合によって、

住民負担なしでマンションの建て替えが可能なことがあります。

 

容積率が余っているとき。

どんな場合かというと、

容積率が余っているときです。

 

容積率というのは、

土地の広さに対して、

何%まで建物を建てていいのかの制限のことです。

 

例えば、1000平米の土地で、容積率が800%なら、

8000平米までの延べ床面積の建物を建てることができます。

 

結構建てられますね。

 

大抵の場合、

容積率ギリギリまでのマンションが建てられることが多いです。

 

でも、あえて、

容積率を使い切らないでマンションが建てられることがあります。

 

使い切らないどころか、

半分の容積率しか使わなかったりとかですね。

 

低層階にしたかったり、自然環境を残したいという場合、

そういう選択がされることがあります。

 

そんな時、住民負担なしでマンションを建て替えられることがあります。

 

今以上の住戸を作り、販売することで可能にします。

今以上の数の住戸を作って、

それを第3者に販売するんです。

 

例えば、今の2倍の住戸数にするのであれば、

今住んでいる人が全員再入居したとしても、

半分の住戸が残ります。

 

その住戸を、新築マンションとして第3者に販売するんです。

 

もちろん、新築価格で。

4000万円とか5000万円とかでですね。

 

そのお金で建て替え費用をまかなえるのであれば、

住民負担はなくなります。

 

言ってみれば、新入居者に建て替え費用をだしてもらう感じですね。

 

容積率が余っている場合、

そういったことが可能になります。

 

2つの実例があります。

実際に、住民負担なしで建て替えがおこなわれた実例が2つあります。

どちらも東京都内です。

 

【1】桜上水ガーデンズ

ひとつめは、東京都世田谷区の桜上水ガーデンズです。

 

2015年に建て替えが完了しました。

 

その前は、桜上水団地という名前で、

1965年に建てられました。

 

築50年での建て替えですね。

 

住民負担なしでの建て替えとなりました。

 

桜上水団地の時には、

5階建て、総住戸数が404戸でした。

 

それが、桜上水ガーデンズでは、

最大14階建て、総住戸数は878戸になりました。

 

2倍以上の住戸数ですね。

 

余った住戸は販売され、

建て替え費用にあてられました。

 

また、桜上水団地の場合、

容積率が余っていたというのもありますが、

立地が良かったのも大きいです。

 

世田谷区ですし、桜上水駅から徒歩3分ほどの立地です。

 

多くの人が欲しがる立地でしょう。

価格も高く売ることができます。

 

桜上水ガーデンズの場合、

部屋によっては1億円以上で取引されています。

 

【2】ブリリア多摩ニュータウン

ふたつめは、東京都多摩市のブリリア多摩ニュータウンです。

 

こちらは2013年に建て替えられました。

 

その前は、諏訪二丁目住宅という名前で、

1971年に建てられました。

 

築42年での建て替えですね。

 

こちらも住民負担なしでの建て替えとなりました。

 

諏訪二丁目住宅の時には、

5階建て、総住戸数は640戸でした。

 

それが、ブリリア多摩ニュータウンでは、

最大14階建て、総住戸数は1249戸になりました。

 

こちらもほぼ2倍の住戸数に増えてきます。

 

また、京王永山駅から徒歩7分ほどの立地です。

 

桜上水ガーデンズほどではないですが、

徒歩7分なので駅近な方ですね。

 

住戸数が約2倍になりましたが、

自然環境は守られているというのもポイントです。

 

こちらは、4000万円から5000万円で取引されています。

 

通常は、1平米あたり25万円ほどかかります。

2つの事例を紹介しましたが、

こういうことができるのは極めて稀だと思います。

 

容積率が余っているのはもちろんなのですが、

立地も実は重要です。

 

マンションの建築費というのは、

2019年現在だと、

だいたい1平米あたり25万円ほどの費用がかかります。

 

100平米の部屋を建て替えるのに、

約2500万円かかるということですね。

 

普通、マンションを建て替えるとなると、

これくらいの費用がかかってしまうんです。

 

もし、住民負担なしでマンションを建て替えようとすると、

新住民の方に、この費用を負担してもらわないといけないんですね。

 

つまりは、新住民の方は、

2部屋分のお金をださないといけないということです。

 

2500万円の2倍だと5000万円ですね。

最低でも、5000万円以上で売り出す必要があります。

 

立地によっては、そんな価格で売り出すことは不可能なんじゃないでしょうか?

 

2つの事例は、

どちらとも東京都内ということが成功の要因になっています。

 

特に、桜上水ガーデンズの場合には、

部屋によっては1億円以上での取引になっていますからね。

 

まとめ

というわけで、住民負担なしでマンションを建て替えることは可能かというお話をしました。

 

難しいです。

でも不可能じゃありません。

 

容積率が余っているのであれば、

可能性はあります。

 

今よりも大きなマンションを建てて、

余った住戸を販売します。

 

その利益で、建て替え費用をまかなうことができればいいんです。

 

実際、住民負担なしで建て替えられた実例が2つあります。

 

桜上水ガーデンズとブリリア多摩ニュータウンです。

 

ちなみに、そんなことができない場合には、

建て替え費用として1平米あたり25万円ほどの費用がかかります。

 

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投稿者プロフィール

山河直純
山河直純住宅不動産研究家
一級建築士受験資格保有。建築家が設計した住宅、築40年以上のヴィンテージマンション、ハウスメーカーの住宅などなど、住宅全般をこよなく愛しています。特に狭小住宅好き。

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