「確認済証」と「検査済証」はどう違うんでしょうか?

不動産の売買、住宅ローン、住宅用家屋証明書の申請など、不動産についての手続きには「確認済証」や「検査済証」の添付が求められることがあります。

 

「確認済証」や「検査済証」と言われても、初めて耳にする人にとっては、なかなかその違いが分かりにくいかもしれません。

分かりやすくお話します。

 

「確認済証」がなければ建物を建て始めることができません

まずは確認済証からお話します。

 

確認済証が発行されないことには建物を建て始めるということはできません。

建物を建てるために必ず必要になる書類、それが確認済証です。

 

建物が完成するまでにはいくつかの過程があります。

シンプルに言えば5つの過程に分けられます。

 

「設計」

「建築確認申請」

「建物の施工開始」

「建物の完成」

「建物の引き渡し」

 

の5つです。

 

確認済証というのは建築確認申請をした結果得られる書類です。

 

建物というのは勝手に建てていいというものではありません。

犬小屋ぐらいなら勝手に建ててしまっても問題ないのですが、人が住むための家となると必ず役所(特定行政庁or指定確認検査機関)への申請が必要になってきます。

 

「こんな感じの建物を建てたいんですけどいいでしょうか?」というのが建築確認申請にあたります。

「いいよ」という返事が確認済証です。

 

図面上は建築基準法に適合しているという証拠が「確認済証」です

建築確認申請では、建てようとしている建物が建築基準法にちゃんと適合しているのかということがチェックされます。

 

建築基準法では敷地の大きさに対して、建てられる建物の大きさが決まっています。

容積率や建ぺい率という言葉を聞いたことはありませんか?

 

敷地が100平米で建ぺい率が40%なら、建物の建築面積は40平米が上限になります。

 

建築面積というのは建坪とも呼ばれます。

1階部分の面積と言っても良いかもしれません。

 

もし、図面上で建築面積が40平米を超えているのであれば建築許可はおりません。

確認済証は発行されないということです。

 

なので、相当古い建物(建築基準法が制定される前から建っている建物)か、違法建築でもない限り、確認済証が発行されていない建物というのはあり得ないということですね。

 

「家を持ってるけど確認済証なんて知らないよ?」という場合には、発行されていないのではなくて、家の中のどこかにあるか、紛失してしまった可能性が高いです。

 

建物は「図面通り」に建てられるとは限らない?

確認済証が発行されないと建物は建てられないとお話しました。

完成した建物は申請した図面通りに建てられているはずです。

 

そのはずなんですが、実際には、図面通りに建てられていないことも少なからずあるんですね。

例えば、ロフト。

 

建築基準法ではロフトと呼ぶには天井高が1.4m以下であることが決められています。

そして、ロフトであれば床面積にカウントされないというメリットがあります。

 

容積率一杯に建物を建てたいと思う場合、床面積にカウントされないロフトというのは魅力的なんですね。

 

そんなロフトなのですが、実際に完成したら天井高が1.4m以上になっていたということがあります。

普通の部屋として使えるぐらいに。

 

まあ意図的おこなわれることがほとんどですが。

 

天井高が1.4m以上になるとロフト扱いではなくなり床面積にカウントされることになります。

容積率一杯に建てていた場合、それで容積率オーバーになってしまうんですね。

 

言ってみれば違法建築になります。

 

図面通りの建物が完成したという証拠が「検査済証」です

確認済証が発行されていても、図面通りに建物が建てられているとは限りません。

それを防ぐためにあるのが検査済証です。

 

建物が完成したときに、図面通りに建物が建てられているのかを役所(特定行政庁or指定確認検査機関)に検査してもらいます。

そのことを完了検査と呼びます。

 

(施工中に中間検査がおこなわれることもあります)

 

そこでOKがでると検査済証が発行されるんですね。

 

「2005年以前」は検査済証がない建物が結構多い?

今では建物を建てると確認済証と検査済証のどちらも発行されることがほとんどになってきているようですが、以前は検査済証がない建物というのは結構多かったんです。

特に2005年以前に建てられた建物には検査済証がないことが結構あります。

 

一応、建物が完成したら完了検査を受けるということは建築基準法での義務になっています。

建築基準法第7条の2に定められています。

 

でも、実際のところは完了検査をしなくても問題ないことがほとんどだったんです。

特に2005年以前は。

 

なぜ、2005年以前なのかというと、2005年に耐震偽装問題があったからです。

耐震基準を満たしていないマンションが数多く見つかりました。

 

その結果、建てられた建物がちゃんと建築基準を満たしているのかという世間の意識が高まったんですね。

家を購入する側が気にし始めたんです。

 

その結果、2005年以降は不動産業者も完了検査を受けて検査済証を発行してもらうことが多くなりました。

今では検査済証が発行されないことには住宅ローンの融資をしないという金融機関も多いです。

 

検査済証が発行されてない場合はどうする?

最近では検査済証が発行されることも多くなってきていますが、検査済証が発行されていない建物というのも依然として数多くあります。

そして、不動産関係の手続きには検査済証が求められることも多いです。

 

不動産の売買や中古不動産のリノベーションなどですね。

 

売買の場合には検査済証がなくても大丈夫なこともありますが、リノベーションをおこなうには増築や用途変更の建築確認申請が必要になります。

そのときに、検査済証が求められるんですね。

 

検査済証を紛失しているぐらいなら、台帳記載事項証明書を発行することで検査済証の代わりにできたりします。

検査済証を発行したという履歴が記載されている書類です。

 

でも、そもそも完了検査を受けていなくて検査済証が発行されていない場合はどうなるんでしょうか?

 

そんな場合でも、解決策はあります。

というか、2014年に解決策が用意されました。

 

「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」というものが国土交通省によって用意されました。

 

簡単に言えば、築年数が経っていても、新築時に図面通りに建てられていたかどうかをチェックしますよというガイドラインです。

それに合格すれば検査済証の代わりとして使うことができます。

 

このガイドラインに則った検査をしてくれる機関は国土交通省のサイトに掲載されているので、検査済証が発行されていないという場合にはチェックしてみてください。

 

外部リンク:検査済証が発行されていない場合のガイドライン|国土交通省

 

まとめ

というわけで、確認済証と検査済証の違いについてお話しました。

 

確認済証というのは、「こんな感じの建物を建てたいのですがいいですか?」という申請に対しての「いいよ」という書類です。

 

検査済証は、「実際に建物が完成しました。図面通りに建てられているのか検査してください。」という申請に対しての「OK」という書類です。

 

今では検査済証が発行されることが当たり前になってきていますが、2005年以前は完了検査がおこなわれないことも普通でした。

一応、建築基準法では完了検査は義務になっているのですが、実際には完了検査を受けなくても問題になることは少なかったからです。

 

なので、検査済証が発行されていない建物というのは現状でもたくさんあります。

 

でも、不動産の売買やリノベーションなどで検査済証が求められる場合というのは結構あります。

そんなときは、2014年に国土交通省によって用意された「検査済証のない建築物に関わるガイドライン」を利用しましょう。

 

検査済証の代わりとして使うことができます。

 

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投稿者プロフィール

山河直純
山河直純住宅不動産研究家
一級建築士受験資格保有。建築家が設計した住宅、築40年以上のヴィンテージマンション、ハウスメーカーの住宅などなど、住宅全般をこよなく愛しています。特に狭小住宅好き。

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