建売住宅の登記は「所有権保存」でなく「所有権移転」になる?
家を購入すると所有権の登記をすることになります。
「この家はわたしのものだ!」ということを法的に主張することができるようにするためですね。
ちなみに、所有権の登記には2種類あります。
「所有権保存登記」と「所有権移転登記」です。
新築の場合には「保存」、中古の場合には「移転」になります。
ですが、建売住宅の場合には新築であるにも関わらずに所有権「移転」登記になることがあります。
なぜなんでしょうか?
本来は「所有権移転」です
最初に言っておくと、建売住宅であっても「所有権保存登記」になることがほとんどです。
新築なので所有権保存登記になるのは当然とも思えます。
でも、新築の建売でも「所有権移転登記」になることもあるんです。
というよりも、本来は「所有権移転」になるはずなんです。
住宅用家屋証明書という書類があります。
所有権の登記の際に登録免許税を安くすることができる書類です。
そんな住宅用家屋証明書、建売住宅の場合には、所有権保存のための書類と、所有権移転のための書類、どちらでも発行が可能です。
注文住宅の場合は所有権保存のための書類だけです。
また、中古住宅の場合には所有権移転のための書類だけです。
でも、建売の場合には所有権保存になることが多いですが、所有権移転になることもあるために、どちらでも発行可能になっているんですね。
建物が完成したら1ヶ月以内に表題登記しなければいけない?
不動産登記法では建物が完成したら1ヶ月以内に表題登記をおこなわなければいけないと決められています。
第47条1項です。
新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。
建売住宅の所有権はもちろんその建売業者にあります。
建物の完成前に家が売れるなら別ですけどね。
なので、家が完成したら建売業者が表題登記しなければいけません。
ちなみに、表題登記というのは、建物の所在地や用途や構造や床面積などを登記することです。
登記事項証明書の1番上に掲載される情報を登記するということですね。
表題登記をおこなわないことには所有権保存登記も抵当権設定登記もおこなうことができません。
家が建ったらまず初めにおこなう登記です。
でも、表題登記をおこなうときにはひとつ注意点があります。
それは、表題登記をおこなうと、その人「以外」は所有権保存登記がおこなえなくなるということです。
つまりは、建売業者が表題登記だけおこなって、家が売れてから買主が所有権保存登記をおこなうということはできないということですね。
建売業者が表題登記をおこなうなら所有権保存登記も建売業者がおこなうことになります。
「所有権移転」だと登録免許税が高くなってしまいます
所有権保存登記でも所有権移転登記でも、所有権を得ることには変わりありません。
「それだったら所有権移転登記でもいいんじゃないの?」って思うかもしれません。
でも、所有権移転登記だと都合がよくない点があります。
それは登録免許税です。
所有権移転の場合には所有権保存に比べて登録免許税がかなり高くなってしまうんですね。
所有権保存登記なら家の価格の4/1000の登録免許税がかかります。
家の価格が1000万円なら4万円の登録免許税がかかります。
一方、所有権保存登記の場合には家の価格の20/1000の登録免許税がかかります。
家の価格が1000万円なら20万円の登録免許税がかかるということです。
その差5倍です。
かなり大きいですよね。
実際のところは住宅用家屋証明書を提出することでもっと安くすることができるのですが、それでも所有権保存登記よりも所有権移転登記のほうが高くなってしまうのは変わりありません。
そして、なによりも、建売業者が表題登記と所有権保存登記をおこなうなら、建売業者も登録免許税を支払わなければいけません。
グレーゾーンですが建物が完成しても表題登記せずにしておくことが一般的です
そんなこともあって、グレーゾーンではありますが建物が完成しても家が売れるまでは表題登記せずにしておくことが一般的になっています。
不動産登記法の第47条1項はこうでした。
新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。
この中の「所有権を取得した者」を、建売住宅を購入した者と解釈するんですね。
建売業者はあくまでも所有することが目的じゃなくて販売することが目的なんだから所有権を取得した者にはならないという解釈です。
そうなると、確かに建売住宅が売れてから1ヶ月以内に購入者が表題登記すればいいことになります。
でも、中古住宅の場合には転売目的であっても一旦所有権移転しなければいけないため登録免許税がかかります。
建売の時だけ、販売目的だから所有権は発生しないというのはちょっとおかしな話のようにも思えますが、実際のところは表題登記されずに販売されることが一般的になっています。
家が売れてから購入者自身に表題登記してもらうという流れ
建売業者が表題登記をおこなわないのであれば、建売住宅の購入者自身が表題登記をおこなうことになります。
その流れであれば所有権保存登記も購入者がおこなえることになります。
ただ、ひとつだけ問題になるのは「いつ」表題登記をおこなうのかという点です。
一般的には所有権保存登記というのは売買の決済日と同じ日におこないます。
売主と買主と司法書士と金融機関の4者が集まって同じ日に融資や決済や登記などをおこないます。
所有権保存登記と同時に、抵当権設定登記もおこないます。
でも、所有権保存登記も抵当権設定登記も表題登記が完了していないことにはおこなうことができません。
なので、実際のところは家が売れてからというよりも、家が売れる1〜2週間前に購入予定者に表題登記をおこなってもらうということがおこなわれます。
売買の決済日よりも前に、表題登記がおこなわれるんですね。
建売業者からしたらちょっとリスクがあります。
まだ売買の決済が完了していないのに、表題登記だけおこなわれることになるからです。
その間にやっぱりキャンセルということになると面倒なことになります。
表題登記をおこなった人でなければ所有権保存登記がおこなえませんから。
建売住宅でも「所有権保存」にすることで登録免許税を安くできます
多少のリスクをかかえることになるし、グレーゾーンではあるのですが、建売住宅でも所有権保存登記にされることがほとんどです。
なんといっても登録免許税が安くなりますからね。
所有権移転登記に比べて数十万円の差がでます。
建売住宅を購入する側としても当然、所有権保存登記を望むと思います。
というよりも、購入者からしたら新築なのになぜ所有権移転登記になるのかが理解しがたいかもしれません。
まとめ
というわけで、建売住宅の登記は所有権保存登記になるのか?それとも所有権移転登記になるのか?というお話をしました。
不動産登記法的には所有権移転登記になるはずなのですが、実務上は所有権保存登記になることがほとんどになります。
グレーゾーンではあるんですけれどね。
本来は、家が完成したら1ヶ月以内に表題登記をおこなう必要があるのですが、建売住宅の場合には家が売れるまで表題登記はおこないません。
表題登記をおこなうと所有権保存登記までおこなわなければいけなくなるからです。
なので、家が売れてから(正確には売買の決済日の1〜2週間前に)建売住宅の購入者自身に表題登記をおこなってもらうことになります。
そうすることで、建売住宅であっても所有権保存登記にすることができるからです。
関連記事:登録免許税を安く(減税)することができる「住宅用家屋証明書」とは?
関連記事:「表題登記(表示登記)」は自分でやったほうがいい?
投稿者プロフィール
- 一級建築士受験資格保有。建築家が設計した住宅、築40年以上のヴィンテージマンション、ハウスメーカーの住宅などなど、住宅全般をこよなく愛しています。特に狭小住宅好き。
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