不動産を買いたいときは、売主に対して「買付証明書」という書類を提出することが一般的です。
「あなたの所有するその不動産を買いたいです」ということを文書化したものです。
それと似たような書類として「取り纏め依頼書」というものがあります。
この書類も不動産を買いたいときに提出するものなのです。
一体どんな違いがあるんでしょうか?
取り纏め依頼書はプロが「仲介業者」に提出するものです
買付証明書は買主が売主に提出するものですが、取り纏め依頼書はちょっと違います。
不動産のプロが仲介業者に提出するものです。
不動産のプロというのは、例えば、建売住宅メーカーや、マンションデベロッパーなどです。
家を建売するための土地が欲しい場合に、仲介業者に取り纏め依頼書を提出したりします。
マンションを建てるための土地が欲しい場合などに仲介業者に取り纏め依頼書を提出したりします。
最近でいえば、リノベーション業者が中古住宅をリノベーションして転売するために仲介業者に取り纏め依頼書を提出することもあります。
なぜ、「売主」にではなく「仲介業者」になんでしょうか?
ここで疑問に思うのではないでしょうか?
「なんで売主に直接買付証明書を提出するんじゃなくて仲介業者に取り纏め依頼書を提出するの?」と。
確かにその通りです。
売主に直接買付証明書を提出したほうが話が早いはずです。
実は、売主に買付証明書を提出しない理由というものがあります。
というよりも、売主に買付証明書を提出できない理由があります。
売主が「売る」とはまだ言っていないから
その理由というのは、売主がまだ「売る」とは言っていないからです。
(まだ売ると言っていないなら売主ではなくて持主ですね)
持主は、ただ単に住んでいる家がどれくらいの値段で売れるのかを知りたくて不動産仲介会社に連絡をすることがあります。
「もし、すごく高く売れるんだったら売ってもいいかな?」ぐらいのノリです。
家の評価額を知りたいだけで売る気はほとんどないという持主もいるでしょう。
とはいえ、仲介業者は不動産の売買をして手数料を得る仕事です。
売買にならなければ1円にもなりません。
持主からの「売るとしたらいくらで売れるのか査定して欲しい」という段階で、その物件を欲しがりそうな不動産のプロに連絡を入れています。
「まだ売りにでるか分からないですが、こんな物件があります。欲しくないですか?」という感じです。
そんなときに売主(まだ持主)に対して買付証明書なんて提出できないですよね。
もし提出されたら「いや、売るとは言ってないよ」で終わりです。
そこで、取り纏め依頼書という書類が登場します。
持主にあまり売る気がなくても、仲介業者は取り纏め依頼書を持主に見せて、「あなたの家を買いたいという業者がいるのですが売るつもりはないでしょうか?」と営業するわけです。
2つ以上の物件をまとめて買いたいから
マンションを建てるための土地が欲しい場合、広い土地が必要です。
そんなときにも取り纏め依頼書が使われます。
2つ以上の物件をまとめて買いたいときにマンションデベロッパーは仲介業者に取り纏め依頼書を提出します。
「ここらへん一帯の物件をまとめて購入したい」ということが書かれた取り纏め依頼書です。
仲介業者はその取り纏め依頼書をもとに、物件の持主に対して「あなたの家を買いたいという業者がいるのですが売るつもりはないでしょうか?」とアプローチします。
取り纏め依頼書には法的な効力はありません
ちなみに、取り纏め依頼書には法的な効力というものはありません。
買付証明書にも法的な効力というものはありませんから当然だと思います。
ただ、法的な効力はありませんが、仮に仲介業者に「ここらへん一帯の土地を買いたい」という取り纏め依頼書を提出したマンションデベロッパーが、取り纏め依頼書を撤回した場合、しかも、すでに話が結構進んでいて持主も売る気満々になっていた場合、このマンションデベロッパーは仲介業者から大ヒンシュクをかうことになります。
「もう2度と仲介しない」と言われることでしょう。
これは取り纏め依頼書だけではなくて買付証明書にも言えます。
まとめ
というわけで、「取り纏め依頼書」と「買付証明書」の違いについてお話しました。
一般の人は買付証明書さえ知っておけばいいのではないかなと思います。
取り纏め依頼書というのは不動産のプロのための書類です。
物件の持主にまだ売る気がないときに、仲介業者に対して取り纏め依頼書を提出します。
その取り纏め依頼書をもとに、仲介業者は物件の持主に対して「買いたいという業者がいるのですが売りませんか?」というアプローチをするんですね。
投稿者プロフィール
- 一級建築士受験資格保有。建築家が設計した住宅、築40年以上のヴィンテージマンション、ハウスメーカーの住宅などなど、住宅全般をこよなく愛しています。特に狭小住宅好き。
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