農地を購入して、そこに住むための家を建てたいという人は少なくありません。
農地を宅地として使いたいということですね。
農地を宅地にすることを「農地転用」と呼んだりします。
農地の売買に関わることは農業委員会の許可が必要と言われていたりしますが、農地転用にも農業委員会の許可が必要なんでしょうか?
その農地が「市街化区域」にあるのなら許可は不要です
結論から言えば、買いたい農地が「市街化区域」に立地しているのであれば農業委員会の許可は不要です。
その農地を購入すれば、問題なく宅地として使えるようになります。
ちなみに蛇足ですが、農地の売買では所有権を登記するときに、条件付仮登記になることが多いです。
でも、市街化区域の農地の売買の場合には、許可が不要なので、条件付仮登記ではなく普通の所有権移転登記をおこなうことができます。
市街化区域って「どんな」区域なのか?
なぜ、市街化区域にある農地の場合には許可なく宅地に転用することができるんでしょうか?
それを知るには、市街化区域とはどんな区域なのかを知る必要があります。
簡単に言えば、商業施設や住宅が密集している区域のことです。
公園を除いた自然があまりない区域とも言えます。
駅前は商業施設でにぎわっていますよね。
街路樹が植えられていたりはしますが、自然というものはほとんどありません。
駅から10分ほど歩いた場所にある住宅街だってそうです。
公園があったりはしますが、天然の自然というものはほとんどありません。
せいぜい庭があったり、家の前に木が植えられていたりする程度です。
そんな市街化区域には、農地があるほうが逆に不自然だとは思いませんか?
でも、たまにありますよね。
住宅街の中にポツンと農地が存在していたりとか。
転用のための許可が不要なのはそういう農地なんです。
家庭菜園の延長線上にあるような農地ということですね。
ただし、農業委員会への「届出」は必要です
市街化区域の農地を宅地として使うには、許可は不要ですが、「届出」は必要になります。
届出というのは報告ということですね。
「このたび、市街化区域にありますこちらの農地を購入しまして、宅地として使わせていただくことになりました」というような報告です。
許可をもらう必要はありません。
むしろ、農業委員会はこの届出に対して文句を言うことはできません。
「そんなことは許可しない!」と言うことはできないわけですね。
農業委員会に農地転用届出書が届いたら、「そうですか、わかりました」と届出受理通知書を発送するしかありません。
そんな理由もあって、市街化区域の農地の売買の場合には、条件付仮登記ではなくて、普通の所有権移転登記をおこなえるわけです。
具体的にはこんな流れになります。
「売買契約書の締結時に農地転用届出書も作成」
↓
「農地転用届出書を農業委員会に提出」
↓
「農業委員会から届出受理通知書が届く(届出完了)」
↓
「決済日に所有権移転登記申請(届出完了してるので条件付き仮登記でなくてOK)」
許可が必要な場合には決済日に間に合わないし、許可が下りない可能性も大いにあります。
なので、条件付仮登記になるんですね。
「市街化調整区域」の場合には「都道府県知事」の許可が必要です
市街化区域内の農地の場合には許可は不要なのですが、市街化「調整」区域の農地の場合には許可が必要です。
それも「都道府県知事」の許可が必要です。
農業委員会の許可ではないんですね。
実は、農業委員会の許可が必要なときというのは、農地の所有者だけが変わるときだけなんです。
所有者は変わるんだけれども、農地はそのまま農地として使っていくよという時には農業委員会の許可がいるということですね。
それに対して、農地を農地以外の目的で使おうという場合(農地転用)には農業委員会ではなくて都道府県知事の許可が必要になります。
このことは農地法の3条・4条・5条に定められています。
市街化調整区域って「どんな」区域なのか?
ちなみに、市街化「調整」区域って一体どんな区域なんでしょうか?
「調整」という文字が入っていますね。
何を調整するのかというと、宅地や商業施設の数を調整するんです。
市街化調整区域というのは、簡単に言えば、自然豊かな環境にしていきたい区域なんです。
例えば、農地とか山林とかですね。
そういう区域にはたくさんの宅地は必要ありません。
農業に従事している人達の宅地だけで十分です。
でないと、自然豊かな環境を維持していくことが難しいですからね。
なので、市街化調整区域にある農地を宅地として使いたいという場合には都道府県知事の許可がいるというわけなんです。
そして、基本的には許可されないことが多いです。
というのも、基本的に市街化調整区域というのは宅地を増やしたくないからです。
農業や林業の従事者やそれに関連する理由がなければなかなか許可されないと思っておいたほうがいいかもしれません。
実質的に「農業委員会」の許可も必要です
市街化調整区域の農地転用は、都道府県知事が許可を出すものなのですが、実質的には農業委員会の許可も必要になると考えておいたほうがいいです。
というのも、農地転用許可申請書は直接、都道府県知事に提出できるわけではなくて、その提出窓口は農業委員会になっているからです。
必ず、農業委員会のチェックが入るということですね。
農業委員会の役員の方たちは、実際に、その地で農家をやられている方がなることが多いです。
地域密着型のコミュニティとしての側面が強いとも言えます。
なので「あの農地に家を建てられては困る」「あの農地を駐車場にされては困る」など思うことも少なくないと思います。
そもそも、市街化調整区域は農地や山林として使っていくべき区域です。
農地や山林以外のものが増えていくのは基本的に好ましくありません。
そんなわけで、農業委員会に提出された農地転用許可申請書は、都道府県知事に渡されずにそのまま却下されることもあります。
「都道府県知事に上げるまでもない!」ということですね。
農地法的には少しグレーゾーンかもしれませんが、そういう事例もあるということです。
まとめ
というわけで、農地を宅地として使うには農業委員会の許可が必要かどうかについてお話しました。
大事なポイントは、その農地が「市街化区域」にあるかどうかです。
市街化区域にある農地であれば農業委員会や都道府県知事の許可なく宅地に転用することができます。
ただし、農業委員会への届出だけは必要ですけどね。
もし、宅地として使いたい農地が市街化調整区域にある場合、宅地として使う許可をもらうのは大変だということを知っておいたほうがいいかもしれません。
そもそも、市街化調整区域というのは極力、宅地を増やしたくない区域です。
そんな区域に家を建てたいというのは、それなりの理由がなければ許可はされません。
自然豊かな土地に家を建てたいと思うと、市街化調整区域の農地が魅力的に感じたりするのですが、実際にその農地を宅地として使うのは結構ハードルが高いんですね。
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投稿者プロフィール
- 一級建築士受験資格保有。建築家が設計した住宅、築40年以上のヴィンテージマンション、ハウスメーカーの住宅などなど、住宅全般をこよなく愛しています。特に狭小住宅好き。
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