防火地域に3階建てや100平米以上の家を建てたいと思うと耐火建築物として建てなければいけません。
準防火地域でも4階建て以上なら耐火建築物である必要があります。
火事になったとしても1時間は燃えないでいられる建築物です。
耐火建築物というのは、木造であっても建てることができるんでしょうか?
木造でも耐火建築物を建てることは「可能」です
結論から言えば、木造でも耐火建築物を建てることは可能です。
耐火建築物というのは、火事が起きたとしても1時間は燃えないでいられる建物のことです。
そして、燃えたとしても、構造材は崩れ落ちないでいられることが求められます。
なので、耐火建築物の構造としてはコンクリート造が選ばれることがほとんどです。
コンクリートの主成分は石なので、基本的に燃えません。
耐火建築物にはもってこいの材料なんです。
一方、木材というのはよく燃えます。
焚き火の材料にもよく使われますからね。
そんな木材を使って耐火建築物を建てるのは難しいのですが、技術の進歩によって2017年に1時間は燃えないでいられる木材を使った耐火材が開発されました。
開発したのは竹中工務店。
「燃エンウッド」という耐火集成材です。
ただし、無垢材では「無理」です
木造住宅を建てるのであれば、無垢材を使いたいと思うかもしれません。
でも、無垢材を使って耐火建築物を建てることは不可能です。
耐火建築物どころか、準防火構造すら満たすことができません。
準防火構造というのは、お隣の家が火事になったとしても、巻き添えにならないための構造です。
外壁と軒裏などに20分は燃えずにいられる不燃材を使う必要があります。
無垢材の場合には、不燃材として使うことができません。
無垢材の見た目そのままに、不燃材に加工するという技術はあります。
無垢材をカラカラに乾燥させて、そこにホウ酸塩などの薬剤を染み込ませます。
すると、火にさらされても燃えにくくなります。
ただ、不燃材としては使えるのですが、耐火建築物の材料として使うには性能不足になります。
実際に木造10階建てのマンションが建築中です
木造でも耐火建築物を建てられるという証拠として、近々、木造10階建てのマンションが実際に建つ予定です。
建築主は三菱地所、設計施工は竹中工務店です。
場所は宮城県。
2019年2月下旬までの工期になっているので、そろそろ完成するのではないでしょうか。
構造材にはさきほどもお話した「燃エンウッド」が使われています。
木造10階建てというと、もはやビルですね。
木造でもビルを建てられる時代がきているということです。
木造住宅を耐火建築物として建てるということももちろん可能です。
外部リンク:http://www.takenaka.co.jp/news/2018/03/04/
木造だけど感覚としては鉄骨造に近い?
燃エンウッドは木材を使った集成材ですが、空間の感覚としては鉄骨造に近いのではないかなと思います。
燃エンウッドの柱の最小サイズは30センチ×30センチです。
木造の場合には大きくても15センチ×15センチぐらいです。
12センチ×12センチが多いでしょうか。
断面積的には4倍以上ほども違うことになります。
鉄骨造でよく使われるH鋼には色々なサイズがありますが、住宅用には25センチ×25センチのものがよく使われます。
木造に比べて柱の本数を少なくすることができるので、大きな開口部を確保しやすかったりします。
燃エンウッドは、そんな鉄骨造と似たようなサイズ感です。
木造のビルを建てるために開発されていますからね。
なので、木造として耐火建築物を建てようと思うと、一般的な木造住宅的な空間にはならないはずです。
広々した空間が好きな人にとっては一般的な木造住宅よりもいいかもしれませんね。
木造の耐火建築物は今後増えていくはずです
木造の耐火建築物というのは、まだまだそれほど多くはありません。
でも、今後は増えていく可能性が多いにあると思います。
特に、商業施設に木造のビルが建てられることが増えていくような気がします。
今現在では、商業施設に建っているビルってほとんど鉄筋鉄骨コンクリート造ですよね。
そんな中に、木造のビルが建てばインパクトがあります。
そこから、個人宅に耐火集成材が使われることも増えていくかもしれません。
まとめ
というわけで、木造でも耐火建築物を建てることは可能なのかというお話をしました。
可能です。
無垢材を使っては無理ですが、1時間以上燃えないでいられる耐火集成材が開発されています。
代表的なのは竹中工務店が開発した「燃エンウッド」です。
実際、2019年2月下旬には燃エンウッドを使った木造10階建てのマンションが完成します。
木造で耐火建築物を建てるのは十分に可能ということです。
ちなみに、燃エンウッドの柱のサイズは小さくても30センチ×30センチです。
一般的な木造よりも、鉄骨造の空間構成に近くなるのではないかと思います。
木造のビルを建てるために開発されているので当然といえば当然ですけどね。
関連記事:防火地域でも使える木製のサッシってあるんでしょうか?
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投稿者プロフィール
- 一級建築士受験資格保有。建築家が設計した住宅、築40年以上のヴィンテージマンション、ハウスメーカーの住宅などなど、住宅全般をこよなく愛しています。特に狭小住宅好き。
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