マンションや戸建ての家を買うときには、頭金をいくらか用意することが多いです。
頭金が少ないほどにローンの額が増えて、頭金が多いほどにローンの額を少なくすることができます。
頭金が多いほどに後々のローンの返済が楽になるのは確かなのですが、まとまった頭金を用意するのはそう簡単なことではありません。
家を購入したいというときに十分な頭金を用意できていないことも少なくないのではないでしょうか。
そこで、ここでは家を買うための頭金はどれくらいが相場なのか?
頭金が少なくても家を購入することはできるのか?
ということについてお話します。
頭金0円でもOKです
結論から言えば、頭金0円でも家を購入することはできます。
もちろん、頭金0円のデメリットや危険性というものもあります。
のちほど詳しくお話します。
頭金0円ということは、家を購入するのに必要なお金を全額ローンで借りるということです。
全額ローンで借りることをフルローンと言ったりします。
日本では長いこと超低金利が続いています。
フラット35では金利1%台で住宅ローンを組むことができます。
1991年のバブル崩壊直前では金利8%でした。
金利8%というのは瞬間風速的だとしても、金利4%以上は普通でした。
今、金利4%〜8%で住宅ローンを組むなんて考えられないのではないでしょうか?
利息の返済額がとても高額になってしまいます。
そんなこともあって、バブル崩壊以前は、頭金を2〜3割ほど用意することが多かったんです。
金利が高いのでできるだけ頭金を多くしたほうが良かったんです。
でも、今は超低金利です。
フルローンで借りても以前ほど高額な利息にはならなくなっています。
また、金融機関からしても、超低金利というのは利息収入が減るということを意味します。
1件あたりの融資から得られる利息収入が減っているということです。
そうなると、利益をあげるには融資の件数を増やすしかありません。
そんなこともあって、頭金を用意できていない人にも融資できるように金融機関そのものがフルローンを認めはじめました。
超低金利のおかげで、頭金0円でもフルローンで家を購入することができるということです。
ただし、手付金と初期費用の現金は必要です
頭金0円でも家を購入することはできると言いましたが、手持ちの現金0円で購入することは難しいです。
というのも、家の購入には家そのもののお金の他に「手付金」と「初期費用」の2つがかかるからです。
初期費用のことは「諸費用」と言ったりもします。
この「手付金」と「初期費用」は手持ちの現金で支払う必要があります。
手付金はローンで借りることができない?
手付金というのは不動産売買契約書を締結するときに必要になるお金のことです。
「不動産売買契約書を締結しましたよ」という証明のためのお金です。
この手付金。
頭金と同じようなものと思われることが多いのですがちょっと違うんです。
手付金というのは、不動産売買契約書の締結のときに現金で売主に渡すものなのですが、売買の決済が無事に終わったら返してもらえるお金なんです。
言ってみれば一時預かり金みたいな性質をもっています。
仮に、不動産売買契約書を締結した後に「やっぱり買いません」となったら手付金は返金してはもらえません。
ただ、実務的には手付金は頭金と同じような働きをします。
本来は手付金は無事に決済が終わったら買主に返還されるものなのですが、売買代金の頭金に充当されることがほとんどです。
住宅ローンというのは基本的に家の売買代金のみに対して行われます。
手付金というのは法的には売買代金の中に含まれないのでローンで借りることができません。
現金で用意しなければいけないんですね。
(金融機関によっては手付金もローンで貸してくれるところもあるようです)
手付金は100万円になることが多い
手付金というのは売買価格の5%〜10%ほどが目安だと言われています。
家が未完成の状態であれば5%、家が完成しているのであれば10%ほどが目安です。
家の価格が5000万円で完成した状態だとすれば、その10%の500万円が手付金の目安ということです。
手付金は基本的にはローンで借りることができないので、現金で500万円を用意しなければいけないことになります。
みんな500万円もの手付金を現金で用意しているのでしょうか?
そんなことはありません。
実際のところは手付金の額は100万円程度になることが多いです。
売買価格がいくらであっても100万円になることが多いです。
手付金というのは安すぎても問題があります。
不動産売買契約書の締結を保証するためのお金でもあるからです。
不動産売買契約書を破棄する場合には手付金が没収されます。
仮に手付金が1万円だとすれば、簡単に不動産売買契約書を破棄してしまう可能性がでてきます。
「1万円を損するぐらいならいいか」という感じです。
保証金として効力のある額、かつ、現金で用意できる額。それが手付金100万円なんですね。
関連記事:手付金の目的は?手付金の金額を決める前に知っておきたいこと
初期費用にはどんなものがある?
初期費用(諸費用)は主に2つに分けられます。
「不動産の登記や税金に関する費用」と「住宅ローンに関する費用」の2つです。
不動産の登記や税金に関する費用には次のようなものがあります。
- 所有権保存登記(新築時)
- 所有権移転登記(中古)
- 仲介手数料(仲介会社が入っているなら)
- 印紙税
- 不動産取得税
- 固定資産税
など。
住宅ローンに関する費用には次のようなものがあります。
- 融資手数料
- 印紙税
- 抵当権登記費用
- ローン保証料(金融機関によっては)
など。
初期費用の合計額は売買代金のだいたい3%〜10%ほどになります。
中古の場合は仲介手数料がかかるので高くなる傾向があります。
仲介手数料だけで売買代金の3%+6万円だからです。
繰り上げ返済するなら住宅ローン控除が終わる10年後からがいい?
住宅ローンには繰り上げ返済という仕組みがあります。
35年の住宅ローンを組んでいても繰り上げ返済を利用すれば返済期間を30年や25年に早めることができます。
返済期間が短くなればそれだけ支払うべき利息も少なくなります。
手持ちの現金に余裕があるのであれば、早いうちから繰り上げ返済したほうがいいようにも思えます。
でも、ここで気になってくるのが住宅ローン控除の存在です。
住宅ローン控除というのは家を購入してから10年間はローン残債の1%(年間上限40万円)を課税所得から控除できるという制度です。
ローン残債が3500万円なら35万円分を控除できるということです。
所得税の課税率が20%であれば年間7万円ほど税金が還ってくることになります。
(確定申告が必要です)
それが10年間続くのであれば合計305万円分を控除することができて合計61万円ほどの税金が還ってくることになります。
これが、家を購入して5年後に500万円を繰り上げ返済したとしたらどうなるでしょうか?
控除額は280万円になり還ってくる税金は56万円ほどになります。
繰り上げ返済しない場合よりも5万円ほど還ってくるお金が少なくなります。
ですが、500万円を繰り上げ返済することによって利息の返済額は128万円ほど少なくなります。
そう考えると、住宅ローン控除は気にせずに繰り上げ返済したほうがお得だと言えます。
フラット35であれば繰り上げ返済の手数料もかかりません。
頭金が貯金できないのであれば繰り上げ返済も難しい?
繰り上げ返済をすると支払う利息の額を少なくすることができます。
頭金0円でフルローンで家を購入して、少しずつ繰り上げ返済していく予定という人も少なくないのではないでしょうか?
「フルローンで家を買うと利息が高くなるけれども、繰り上げ返済すれば頭金を用意したのと同じような利息になるよね?」ということです。
でも、その予定が計画通りにいく可能性はとても低いと思っておいたほうがいいです。
繰り上げ返済するには貯蓄する習慣がなければいけません。
もし、貯蓄する習慣があるのであれば、今の時点である程度の頭金が用意できているはずなんです。
今、頭金があまり用意できていないのであれば、繰り上げ返済をすることを当てにして家を購入することはやめておいたほうがいいかもしれません。
例え、繰り上げ返済できなかったとしても無理のない価格の家を購入するほうが無難です。
頭金0円だと売却が難しくなる?
頭金0円でもフルローンで家を購入することは可能です。
ただし、危険性もあります。
予期せずに家を売却しなければならなくなったときに問題が発生する可能性があります。
住宅ローンで購入した家を売却するには、ローン残債を一括で返済する必要があります。
抵当権を抹消する必要があるからです。
抵当権というのは、あなたがローン返済できなくなったときに、金融機関がその家を売却するなりして資金回収することができる権利です。
家の所有権があなたにあったとしても、抵当権が設定されているとその家を自由に売ることはできません。
簡単に言えば、家を売るときにはローン残債よりも高く売らなければいけません。
これが頭金0円だと難しくなります。
特に新築の場合はそうです。
新築の家は、買った瞬間に2割ほど価値が下がると言われています。
土地代は下がらないですけどね。
例えば、土地が1000万円、建物が2000万円で新築を購入したとします。
買った瞬間に建物代の2000万円は1600万円にその価値が下がります。
3000万円で購入した家が2600万円でしか売れなくなるということです。
仮に、買ってすぐに売却する必要がでてきた場合、頭金0円で購入している場合にはローン残債3000万円に対して2600万円の値段しかつきません。
抵当権を抹消することができずに売却することができません。
不足分の400万円を自己資金で用意できるのであれば抵当権を抹消することはできるのですが、頭金0円で家を購入したのであればそれは難しいのではないでしょうか。
一方、売買価格の2割の600万円を頭金として用意していたのであれば、ローン残債は2400万円です。
2600万円の売値であれば抵当権を抹消することができます。
頭金を用意するならいくらぐらいがいいのか?
頭金0円でも家を購入することはできます。
でも、予期せずに家を売らなければならなくなったときに抵当権を抹消することができずに困ったことになる可能性もあります。
頭金というのは用意するならいくらぐらいがベストなんでしょうか?
統計による頭金の平均はどれくらい?
国土交通省から「住宅市場動向調査」という資料が毎年発行されています。
現時点では平成29年度が最新版です。
この資料を見ると、住宅を購入したときの自己資金比率(頭金)がわかります。
いくらだと思いますか?
実は頭金の平均額は思っている以上に高いです。
総額4334万円の注文住宅を購入する場合、頭金の平均は1250万円です。
28.8%が頭金ということです。
総額4192万円の分譲マンションの場合は、頭金の平均は1796万円です。
42.8%が頭金ということになります。
なぜ、こんなに頭金の比率が高くなっているのかというと、現金一括で購入してしまう例もこの統計の中に含まれているからです。
若い世帯が頭金0円で家を購入する一方で、現金を持っている高齢者は現金一括で家を購入してしまいます。
その結果、統計としては頭金の比率がとても高いということになっています。
老後の住まいとしてマンションを選択する高齢者が多い?
住宅市場動向調査の統計をみてみると、戸建てを買うときよりもマンションを購入するときのほうが頭金の多いという傾向に気が付きます。
戸建ての場合は1250万円でマンションの場合は1796万円です。
明らかな違いが見られます。
これは、現金を持っている高齢者はマンションを購入することのほうが多いということを示しているのではないかと思います。
マンションはたいてい立地がいい場所にありますし、戸建てのように底冷えもしません。
ゴミ出しも戸建てに比べれば楽です。
マンションによっては管理人が常駐しています。
そんなこともあって、老後の住まいとしてマンションを選択する高齢者が増えているのではないかと思います。
頭金を多く用意することで支払い総額はどれくらい少なくなるのか?
頭金の額によって利息を含めた支払い総額はどれぐらい変わってくるんでしょうか?
頭金の割合が「0%」と「10%」と「20%」と「30%」の4つの例で比較してみたいと思います。
家の価格は4000万円、金利は1.5%、返済期間は35年で計算します。
- 頭金0円の場合、総額は5144万円
- 頭金10%の場合、総額は5030円
- 頭金20%の場合、総額は4916万円
- 頭金30%の場合、総額は4801万円
頭金が10%増えるごとに、支払い総額が100万円ずつ下がっていくような感じになります。
家の価格が4000万円で頭金10%の場合は頭金の額は400万円です。
頭金を400万円用意しても、頭金0円との支払い総額の差は114万円ほどになります。
金利が1.5%と低いため、返済期間が35年でもそこまでの大きな差にはなりません。
そうなると「頭金0円でも購入してしまいたい」と思うかもしれませんが、頭金0円だと予期せずに家を売らなければならなくなったときに困る可能性があることを覚えておいてください。
頭金を増やすにも最低6ヶ月分の生活費は残しておくこと
頭金を増やすと支払い総額が少なくなるのは確かです。
少しでも支払い総額を減らすために、できるだけ頭金を増やしておきたいと思う人もいると思います。
頭金を増やすのはいいのですが、最低6ヶ月分ぐらいの現金は手元に残しておくようにしておいたほうがいいです。
サラリーマンではなくて自営業やフリーランスの場合にはもっと多めに残しておいたほうがいいかもしれません。
それ以前に自営業やフリーランスの場合はローンに通り難いという事実がありますが。
まとめ
というわけでマンションや戸建てを購入するときの頭金はいくらぐらいが相場なのかというお話をしました。
相場としては一般的には売買価格の2割ぐらいと言われています。
ただ、それはあくまでも目安です。
実際のところは頭金0円で購入する人もいたり、現金一括で購入する人もいます。
今の日本は金利1%台という超低金利ですから頭金0円でも家を購入することができるし、金融機関も頭金0円のフルローンでも融資してくれる傾向にあります。
(今後はどうなるかわかりませんが)
ただ、頭金0円でも家を購入できるとはいっても、手付金と初期費用については現金が必要です。
基本的に住宅ローンで借りることができるのは売買価格のみです。
売買価格以外にかかってくる手数料や諸経費などは住宅ローンの適用外になります。
金融機関によってはそういった手数料や諸経費なども貸してくれますが金利が高くなることがほとんどです。
頭金0円で家を購入するにしても、手付金100万円と諸経費数十万円の現金は用意する必要があります。
ただ、頭金0円で家を購入すると、いざ、家を売却するときに売れないという可能性が高くなります。
ローン残債が家の売値よりも高くなってしまう場合、抵当権を抹消することができずに家を売ることができません。
頭金0円で家を購入するリスクとしてそれだけは覚えておくことをオススメします。
投稿者プロフィール
- 一級建築士受験資格保有。建築家が設計した住宅、築40年以上のヴィンテージマンション、ハウスメーカーの住宅などなど、住宅全般をこよなく愛しています。特に狭小住宅好き。
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