不動産には表題登記(表示登記)というものがあります。
不動産登記というと所有権の登記をイメージすることが多いですが、表題登記というのは所有権ではなくて、その建物がどんなものなのかという概要を登記することです。
家を購入すると、場合によっては「表題登記は自分でやられますか?」と聞かれることもあります。
表題登記って自分でやったほうがいいんでしょうか?
自分でおこなうことも十分に可能です
結論から言えば、できるのであれば自分でやったほうがいいと思います。
難易度から言えば、それほど難しいというものでもありません。
十分に自分でおこなうことが可能です。
インターネットで検索すれば実際に自分で表題登記をおこなった人のブログとかも結構見つかりますしね。
表題登記を自分でおこなうことのメリットはなんといってもコストです。
表題登記の代行をお願いしようとすると土地家屋調査士に依頼する必要があります。
不動産登記というと司法書士というイメージがありますが、表題登記の代行をおこなえるのは土地家屋調査士だけなんです。
司法書士が表題登記の仕事を請け負うこともありますが、裏で知り合いの土地家屋調査士に代行をお願いしているはずです。
土地家屋調査士に依頼するにしろ、司法書士に依頼するにしろ、その費用は5万円〜10万円ほどになります。
地域によって費用に差がでます。
都心ほどに高くなるような感じでしょうか。
ちなみに、表題登記には登録免許税はかかりません。
つまりは自分でおこなえば完全にタダで表題登記ができるんですね。
1番難しいのは図面作成と言われているけれども・・
表題登記申請には添付資料として図面の提出が必要になります。
各階平面図と建築配置図をB4用紙1枚にまとめたものです。
自分でおこなう表題登記の中で1番難しいのが図面作成だと言われています。
確かにそうだと思うのですが、恐れるほどには難しくはありません。
私は建築学科を卒業していて様々な建築図面を書いたり見てきているのですが、表題登記の図面を見た時、「え?これを図面と言うの?」と思いました。
それが図面だとは思えなかったんです。
シンプルがゆえに。
レゴブロックを図面にするようなもの?
言ってみれば、表題登記での図面作成というのは、レゴブロックを図面にするようなものなんじゃないかと思います。
レゴブロックを図面にするところをイメージしてみてください。
四角い箱に小さい突起がくっついているような感じです。
それこそ「凸」こんな感じですね。
ほんとにこんな感じの図面でいいんです。
間取り図にする必要すらないんです。
間取り図の場合には部屋を仕切る壁とかも書かなければいけないので図面はもっと複雑になります。
でも、表題登記の図面というのはどれくらいの床面積でどんなカタチをしているのかさえ分かればいいものになります。
木造住宅の場合には外壁の柱の中心を線で結んでいきます。
そうすると、まるでレゴブロックを図面にしたかのようなものができあがります。
コンクリート住宅の場合には壁の中心線を結びます。
ちなみに図面は手書きでもCADソフトを使ってもどちらでもOKです。
設計図面があるのにわざわざ登記用の図面を作成する理由は?
建築確認申請書の中には設計図面も含まれています。
どう考えても、表題登記のために作成する図面よりも詳細なものです。
それだけで十分じゃないかとも思えます。
なぜ、表題登記をするためにレゴブロックのような図面を作成しなければいけないんでしょうか?
自分で表題登記をおこなう方法について書かれたサイトは結構あるのですが、図面を作成しなければいけない理由についてきちんと説明しているサイトはあまりないのでお話します。
建築確認申請書の中に詳細な設計図面があるにもかかわらず、表題登記用に図面を作成しなければいけない理由、それは建築基準法と不動産登記法の違いにあります。
建築基準法にのっとって算出する床面積と、不動産登記法にのっとって算出する床面積って少し違ってくるんですね。
不動産登記法で算出すると建築基準法に比べて床面積が狭くなることが多いです。
例えば、建築基準法だと100平米だったのが不動産登記法だと95平米になるとかですね。
表題登記で図面を作成する必要があるのは、不動産登記法にのっとった床面積を計算するためなんですね。
「ベランダ」「出窓」「吹き抜け」「天井高が1.5m以下の部分」がある場合は要注意です
例えば、ベランダ。
建築基準法ではベランダも床面積に含まれることになるのですが、不動産登記法だとベランダは床面積に含まれません。
大きな違いですね。
戸建ての2階建ての場合はどこかしらにベランダがつくことが多いです。
なので、建築確認申請書の図面に記載されている床面積を、そのまま表題登記申請書には記載できないんですね。
間違いになってしまいます。
そして、固定資産税が少し高くなってしまいます。
というのも、床面積が広いほどに固定資産税は高くなってしまうからです。
わざわざ固定資産税を高くする必要はありません。
きちんと不動産登記法にのっとった床面積を計算しましょう。
不動産登記法では次の3つが揃うと床面積として計算されることになります。
「屋根がある」
「3方向が壁かガラスで覆われている」
「天井高が1.5m以上ある」
この3つです。
ベランダの場合、基本的には屋根がないことが多いですよね。
3方向が壁で覆われていることも少ないです。
なので床面積には含まれません。
もし、ベランダであっても屋根があって3方向が壁で覆われているのであれば床面積になります。
ベランダではなくてテラスの場合にはそういうこともあるかもしれません。
ロフト部分がある場合、天井高が1.5m以下であればその部分は床面積には含まれません。
出窓も同じような理由で床面積には含まれません。
ただし、出窓であっても出窓の下の部分が収納スペースとして使われているような場合は要注意です。
その収納スペースって床の上に載っているような感じですよね?
そういう場合には出窓の部分からではなくて床から天井までの高さで計算されます。
1.5m以上あるはずなので床面積に含まれることになります。
また、2階部分に吹き抜けがある場合、吹き抜け部分はもちろん床ではないので床面積には含まれません。
ちなみに、階段の部分というのは2階の床面積に含まれるのですが、もし、階段が吹き抜け部分に設置されている場合、階段を床面積から抜くことができます。
玄関が吹き抜けになっている場合にはそういうことも多いかもしれません。
表題登記申請をするために必要な書類とは?
それでは表題登記申請をするために必要な書類についてお話します。
表題登記に必要な書類は以上のものです。
「表題登記申請書」
「住民票」
「案内図」
「建築確認申請書・確認済証・検査済証のコピーか原本」
「各階平面図面・建築配置図面」
「施工会社の引渡証明書」
「施工会社の印鑑証明書」
「施工会社の登記事項証明書」
「譲渡証明書(建売住宅の場合)」
「委任状(代理申請の場合)」
この中で、自分で作らなければいけない書類は「表題登記申請書」「案内図」「各階平面図面・建築配置図面」の3つになります。
住民票は役所に行けば手に入りますし、その他の書類については施工会社や売主に言えば用意してくれます。
不動産の登記申請書のテンプレートについてはそのほとんどが法務局のWebサイトに用意されているのですが、なぜか「表題登記」の申請書は用意されていません。
でも、「表題登記申請書 テンプレート」で検索すればたくさんでてくるので探してみてください。
A4サイズ1枚で収まるような簡単な申請書です。
記入する内容はこんな感じです。
「建物が建っている所在と家屋番号(番地)」
「建物の用途(居宅など)」
「構造」
「床面積」
などですね。
案内図についてはグーグルマップなどを使ってもいいと言われていますが、登記官によってはダメと言われることもあるようです。
そういった場合には法務局にある公図を使います。
グーグルマップで案内図を用意して、もし、申請時にダメと言われたらその場で公図を使って用意するというのでもいいと思います。
公図は法務局にありますからね。
各階平面図・建築配置図面はさきほどもお話した通りです。
B4サイズで左半分に各階平面図を1/250の縮尺で、右半分に建築配置図面を1/500の縮尺で製図します。
手書きするときの用紙としては日本法令社の登記98という製品が使われることが多いです。
書類の原本を返してもらうにはどうする?
表題登記の申請では建築確認申請書や確認済証などの原本を提出することになるのですが、この原本は必ず返してもらいましょう。
原本還付請求をすると原本は返してもらえるのですが、やり方を間違ってしまう人も少なからずいます。
そういった場合、原本は返ってこなくなってしまいます。
そういったことがないためにも、原本還付請求のやり方はきちんと理解しておきましょう。
登記申請をする時には、登記申請書を表紙にして、必要な添付資料をホッチキス留めしたりクリップで留めたりして一式にまとめます。
もし、原本をその一式の書類の中にいれてしまった場合には、原本は返ってきません。
窓口で「原本還付でお願いします」と言ってあっても返ってきません。
原本還付請求をおこなうときには、必ず原本の「コピー」を用意します。
そして、コピーした書類に「原本に相違ありません」と書き込みます。
日付と押印もします。
もっと念入りにしておきたいなら、その上で「原本還付」というハンコを押します。
このハンコは法務局にあるはずなのでそれを利用してもいいと思います。
このコピーした書類を登記申請書の添付資料として使うんです。
そして、申請書類一式とは別に、原本をまとめます。
登記申請で原本還付請求をおこなう場合には、申請書類一式とは別に、原本をまとめたもの提出するということですね。
そうすると、後日、原本をまとめたものだけが返ってきます。
住宅ローンを組む場合には自分での表題登記を嫌がられることも
表題登記は自分でおこなうことも十分にできますが、住宅ローンを組んで家を購入するという場合には不動産会社の人に嫌がられる可能性もあります。
というのも、住宅ローンを組むということは、金融機関があなたの家に抵当権を設定するということでもあります。
もし、売買の決済日までに表題登記が完了しなかったらどうなるでしょうか?
抵当権というのは表題登記と所有権登記が完了していなければ設定することができません。
不動産会社の人はそういった事態になってしまうことを恐れます。
司法書士や土地家屋調査士などのプロの人に頼めばキッチリと決済日までに登記を完了させることができるはずですが、それを買主自身でおこなうという場合にはもしかしたら決済日までには間に合わない可能性がでてきます。
表題登記が完了するまでにはどれくらいの時間がかかる?
ちなみに、表題登記申請をしてから登記完了するまでの時間は地域によって変わってきます。
都心ほどに時間がかかる傾向があるかもしれませんが。
一概に表題登記が完了するまでにはこれくらいの時間がかかるとは言えないのですが、法務局では登記完了予定日をWebサイトで公開しています。
例えば、東京法務局の渋谷出張所の場合、2018年11月29日午後に表題登記申請すれば、12月5日午後に登記完了予定になっています。
北海道の旭川法務局本局の場合は同じ申請日で12月4日午前に登記完了予定になっています。
東京よりも北海道の方が早く登記完了しますね。
どうしても自分で表題登記をおこないたい場合には、この登記完了予定日と決済日に十分な余裕をもって不動産会社の担当者に交渉してみてください。
十分に間に合いそうであれば、不動産会社の人も許可してくれるかもしれません。
まとめ
というわけで、表題登記は自分でやったほうがいいかどうかというお話をしました。
司法書士や土地家屋調査士などのプロに依頼すると5万〜10万円ほどかかるので、自分でやれるのであればやったほうがいいと言えるかもしれません。
難易度的には十分に自分でおこなえるものです。
表題登記で1番難しいと言われているのは図面作成ですが、実際のところはレゴブロックを図面にするぐらいにシンプルな図面です。
製図そのものよりも気をつけるべきは床面積の計算です。
建築基準法と不動登記法では床面積の計算の仕方が少し違うので注意が必要です。
ベランダやロフト部分、吹き抜けや出窓がある場合には気をつけてください。
ちなみに、表題登記の申請には建築確認申請書などの原本を提出しますが、きちんと原本還付してもらえるように気をつけましょう。
原本還付請求のやり方を間違えると原本が返ってきません。
また、住宅ローンを組んで家を買う場合には、自分での表題登記を不動産会社の担当者が嫌がる可能性があります。
それでもどうしても自分でおこないたいという場合には、法務局の登記完了予定日を参考にして決済日までに十分に余裕があるということをアピールしてみてください。
外部サイト:東京法務局の登記完了予定日
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投稿者プロフィール
- 一級建築士受験資格保有。建築家が設計した住宅、築40年以上のヴィンテージマンション、ハウスメーカーの住宅などなど、住宅全般をこよなく愛しています。特に狭小住宅好き。
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