住宅ローンを完済すると金融機関から書類一式が送られてきます。
抵当権抹消登記に必要な書類一式です。
その中に、登記原因証明情報として使うことになる「弁済証書」や「解除証書」が含まれています。
弁済でも解除でもどちらでも抵当権抹消登記に使えます。
でも、なぜ、名前が違うんでしょうか?なにか違いがあるんでしょうか?
保証会社が関わるかどうかの違いです
結論から言えば、「保証会社」が関わっているかどうかの違いを表します。
住宅ローンを組むときには保証人が求められるのが一般的ですが、最近では保証人ではなくて保証会社を通すことが求められることも多くなっています。
というのも、仮に住宅ローンの返済ができないような事態が起こる場合、保証人である家族にも返済能力がない可能性というのが高いからです。
子どもが住宅ローンの返済に困っていたら親が資金を援助するのではないでしょうか。
でも、それができないから住宅ローンを滞納してしまいます。
その点、保証会社を通すならば住宅ローンが滞納されたとしても保証会社にお金を支払ってもらえます。
言ってみれば、保証会社というのは金融機関にとっての保険です。
保険料を支払うのはあなたですが。。
そんなわけで、最近では住宅ローンに保証会社が使われることが多くなっています。
金融機関との直接契約であれば「弁済証書」になります
保証会社を通さずに住宅ローンを組む場合には、登記原因証明情報は「弁済証書」になります。
のちほどお話しますが例外もあります。
この場合には、あなたと金融機関との直接の関わりになります。
あなたは金融機関から家を買うためのお金を借り、金融機関はあなたが買った家に対して抵当権を設定します。
あなたが金融機関からお金を借りるときの契約が「金銭消費貸借契約」、金融機関があなたの家に抵当権を設定するときの契約が「抵当権設定契約」です。
これらをひとつの契約書でまとめてしまうときは「金銭消費貸借兼抵当権設定契約」になります。
この契約であれば、あなたが住宅ローンを完済することが抵当権を抹消するための唯一の条件になります。住宅ローンを完済してもらったら「弁済証書」を発行する。
とても自然な流れです。
保証会社との保証委託契約であれば「解除証書」になります
住宅ローンに保証会社を通すとき、登記原因証明情報は「解除証書」になります。
保証会社がはいると、あなたが購入した家に抵当権を設定するのは保証会社になります。
金融機関が設定するわけではないんですね。
まず、金融機関が保証会社と「保証契約」を結びます。
もし、あなたが住宅ローンを支払えなくなったら、保証会社が代わりに金融機関にお金を払うという契約です。
そして、保証会社とあなたとの間で「保証委託契約」と「抵当権設定契約」が結ばれます。
保証会社が金融機関から委託されるカタチであなたと抵当権設定契約を結ぶということです。
そして、あなたが金融機関に住宅ローンを完済すると「解除証書」が発行されます。
保証会社とあなたとの間で結ばれた抵当権設定契約を解除するということです。
あなたは金融機関にお金を返済したのであって保証会社に返済したわけではありません。
なので「弁済証書」とはならないわけです。
ちなみに住宅ローンを完済できなくても抵当権設定契約が解除されるということはあり得ます。
例えば任意売却になったときなどです。
任意売却というのは住宅ローンが支払えなくなってしまったけど競売にはしたくないときなどに行われます。
競売よりも任意売却の方が家が高く売れる可能性があります。
住宅ローンを全額回収することはできないけれども競売にかけるよりも多くのお金が回収できるならということで、住宅ローンが完済されなくても抵当権設定契約が解除されることがあるということですね。
大手銀行や信託銀行は保証会社を使うことが多いです
三菱UFJ銀行や三井住友銀行、みずほ銀行などの大手銀行や大手信託銀行では保証会社を使うところが多くなっています。
バブル崩壊時の不良債権の山の経験が大きいのではないかと思われます。
銀行が一番嫌がるのが不良債権なのではないでしょうか。
言ってみれば貸し倒れです。
貸したお金よりも少ないお金しか返ってこない。
ビジネスになりません。
保証会社を使えばそういった不良債権を極力抑えることができます。
保証料は借りる側が支払う必要があるので保証会社を通すことを嫌う人たちは離れていくというリスクは抱えることになりますが。
というわけで、大手銀行や大手信託銀行で住宅ローンを組んだという人は「解除証書」の可能性が高いです。
フラット35の住宅金融支援機構は直接契約ですが何故か「解除証書」です
フラット35でおなじみの住宅金融支援機構は保証会社を通しません。
あなたと住宅金融支援機構の直接契約です。
そうなると「弁済証書」が届きそうなものですが「解除証書」が届くようです。
書類の文面をみていくと「弁済により解除しました」との表現があったりします。
弁済と解除ってお話したように保証会社が関わっているかどうかによって変わってきます。
住宅金融支援機構の場合は保証会社を使わないので実質は弁済によって抵当権抹消されるわけなのですが、届く書類は「解除証書」になっているんですね。
いろいろなところで紛らわしいと言われているようですが、実務的には届く書類の通りに「解除」にするのがいいと思います。
登記申請書の原因の欄には「解除」と記入するということですね。
まとめ
というわけで、「弁済証書」と「解除証書」にはどんな違いがあるのかというお話をしました。
保証会社が関わるかどうかで違ってきます。
保証会社を使わないのであれば「弁済証書」、保証会社を使うのであれば「解除証書」になります。
でも、保証会社を使わない住宅金融支援機構(フラット35)から届く書類はなぜか「解除証書」になります。
実質は弁済による抵当権抹消なんですけどね。
でも抵当権抹消登記申請書の原因の欄には書類のタイトルにあわせて「解除」にしておくのが無難です。
参照サイト:https://www.wada7772.com/2018/02/06/2841/
参照サイト:https://next-stage.at.webry.info/201402/article_11.html
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投稿者プロフィール
- 一級建築士受験資格保有。建築家が設計した住宅、築40年以上のヴィンテージマンション、ハウスメーカーの住宅などなど、住宅全般をこよなく愛しています。特に狭小住宅好き。
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